【議論】あなたは悪魔の代弁者になるべきである

【議論】あなたは悪魔の代弁者になるべきである

よくある議論の風景ー日朝関係を例に

ともき君は大学3年生。国際政治のゼミに入っています。今週のゼミの議題は「北朝鮮に対して日本は強硬姿勢を取り続けるべきか否か」です。今日のゼミには3年生だけでなく、4年生や院生も多くきています。

ともき君は議論の前にしっかり準備をしました。侃々諤々の議論をしようと、ともき君はやる気満々です。ではこれからゼミの議論の様子を見てみましょう。

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先輩A「えーやっぱり北朝鮮に対しては日本は強硬姿勢で望むべきだと思います。」

先輩B「私もそう思います。北朝鮮はとっても危険な国家です。日本は北朝鮮に騙され続けてきた歴史があります。そんな国家に対して、宥和政策を取るべきではありません。」

先輩C「その通りです。北朝鮮はアメリカとの関係を回復させようとしていますが、あんなのまやかしです。核放棄なんて絶対にしないです。北朝鮮は国際社会を騙し続けることで生き残ってきたんです。」

ともき(うーん…。議論が単調だよなぁ。日本も北朝鮮と対話すべきなんじゃないかなあ…。でも先輩は声デカくて反対意見を言いづらいし、みんな強硬派だしなあ。なんだか意見しづらい雰囲気だしなあ。今日は黙っとくかぁ)

先輩A「ともきはどう思うの?」

ともき「えっ、あ、いや。そうですね。日本は北朝鮮に対して強硬な姿勢を取るべきだと、まあ、そうですね。そういう風に思います…」

先輩A「だよな!」

ともき(せっかく準備してきたのになあ。議論の波に飲まれてしまった。まあでも先輩の方が知識量もあるし、そんな先輩が議論をリードするのは仕方ないよね…)

議論は進行し…

先輩B「えーでは今週のゼミはここまでにします。」

ともき(はい。不完全燃焼〜。わろたぁ。飲みたい。)

「悪魔の代弁者」を投入してみるとこうなる

この議論の様子を見ていた教授はこう思いました。

(まずいな。議論が単調だ。みんなが同じことを言っている。違うことを考えていても、流されてしまっている。これでは議論も深いものにならない。よし、「アレ」を使おう!)

ー数日後ー

「いやいや呼び出して悪いね。君には今度のゼミの議論で『悪魔の代弁者』になってほしいんだ」

教授に呼び出されたのは先輩A=しょうごくんでした。

『悪魔の代弁者』って何ですか?何だか怪しそうですけど」

「君は前回のゼミの議論はどう感じた?」

「前回ですか? テーマは何だったかな。ああ、北朝鮮でしたね。まあよかったんじゃないですか。いつも通りだったと思います。」

「僕は全くそう思わない。あの議論は全く無価値なものだった。議論は何のためにするのかわかっているかい?」

「議論の目的ですか… あまり考えたことなかったです。」

「それは教授である僕の方に責任がある。僕がみんなに議論をしてもらっているのはもちろん国際政治への理解を深めてもらいたいってのがある。」

「そうでしょうね」

「でもそれだけではないんだ。議論ってのはより良いアイデアを作り出す場なんだ。一つのテーマに関して、いろんな人の意見を集めて、それらを材料にして、ブラッシュアップされた意見を作り出していく。それが議論の場なんだ。先週の議論にはその営みがなかった。」

「なるほど。わかったような気がします。ではその議論と『悪魔の代弁者』とはどう関係があるんですか?」

『悪魔の代弁者』ってのは議論の場において、あえて多数派じゃない方の意見を言う人のことなんだよね。」

「あえて…ですか。」

「そう。『悪魔の代弁者』によって議論の場は多様性を増す。その結果、議論の場は複雑になる。その複雑性の中から意見を洗練するのが本当の『議論』ってやつだ。君には議論の質をアップデートさせてほしいんだ。」

「(うわぁ、何だかめんどくさい役割な気がしてきたぞ)…わかりました。頑張ってみます。」

「期待しているよ」

恐れずに悪魔の代弁者になってみよう

来週のゼミのテーマは「米中貿易戦争」の予定です。しかし、しょうごくんはこう考えました。

「もう一回、先週のテーマをやってみよう。教授からみて、先週の議論は全く無価値だったらしいし。もう一回やってみてもいいんじゃないかな」

しょうごくんは来週の議論のため、自分の意見=「日本は北朝鮮に強硬な姿勢を取り続けるべきである」とは違う意見を集め始めました。

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ともき(しょうごさん、来週ももう一回『日朝関係』とか言ってるけど何考えているんだろうな。まあ僕的には不完全燃焼わろたみたいな感じだったし、また頑張ってみるか)

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ゼミ当日。

しょうご「今週はもう一回『日朝関係』をやりたいと思います。先週は『強硬姿勢を取るべきだ』って意見が多かったと思うんだけど、1週間考えてやっぱり日本は北朝鮮に対して、強硬ではなくて対話姿勢を取るべきなのではないかなと思うんだけど。みんなの意見はどう?」

ともき(しょうごさん、先週と意見が全然違うやん。わろた。見事な手のひら返し。でも味方が増えたってことだよね。これならいけるかも)

先輩B「やっぱり強硬姿勢でしょ。あの国は『ならず者国家』なんだよ。力によって圧力をかけるしかないんだよ」

先輩C「そうだね。間違いない。」

しょうご「僕はそう思わないね。日本以外の国はみんな北朝鮮と対話してる。日本は孤立しているんだよ。孤立しながら日本だけが圧力をかけてもそんなに効果はない。日本は対話するべきだよ。」

(ざわざわざわ)(教授ニヤリ)

しょうご「……ともきはどう思う?」

ともき「はい!!!僕は北朝鮮に対して、日本は対話すべきだと思います!!!!!なぜかっていうと…」

議論はゼミ終了後の飲み会でも続いたとかなんとか。