移民をめぐる問題と欧州議会選挙について解説

移民をめぐる問題と欧州議会選挙について解説

EUとゼノフォビア

グローバル化の進展と移民の流入冷戦の終焉、中東欧の EU 加盟、広がる格差の問題によって、よそ者嫌いを意味するゼノフォビアが EU の中で蔓延しています。

例えば、2004年オランダの映画製作者が殺害された事件や2005年パリ郊外で差別に抗議する移民第二世代の若者の暴動、2016年イギリスの EU 離脱決定後の移民へのヘイトスピーチなどが挙げられます。

これに呼応するように移民排斥を掲げた政党の支持が拡大しています。2002年、フランスのルペンショックがその代表例です。フランス大統領選挙の第1回投票の結果、極右政党である国民運動の党首、ルペンが躍進しました。

移民が多い欧州で移民排斥を謳った政党が支持を拡大したのです。この支持拡大の背景には進展が早い経済グローバル化に対応しきれない既存政党への有権者の拒絶反応と不信感の増大があったこと、社会の停滞がありました。社会の不満の受け皿として極右政党が支持を拡大したのです。

社会保障ツーリズム

話を移し社会保障ツーリズムの話を見ていきましょう。

EU 全体としては単一の社会保障制度を整備していません。各加盟国の社会保障制度の集合体が EU の社会保障制度となっています。そのため EU 域内では、人々が手厚い社会保障サービスを行う国への移住を行う傾向があります。これを社会保障ツーリズムと言います。この社会保障ツーリズムに対しては厳しい対策を取る国もあり社会課題となっています。

狭義の社会保障の意味は保険料を支払った人が補償を受ける社会保険という意味がありますが 、EU の広義の社会保障制度では、それに加えて公的扶助、社会サービス、社会手当、税制上の優遇措置といった制度が整えられています。

公的扶助では貧困に対するセーフティネットとしての生活保護、社会サービス社会手当は税財源による現物給付と現金給付税制上の優遇措置では税控除が行われ社会保障制度は現物給付やサービスを提供する現物支給とその資金調達の二つの側面を持っています。

EU における社会保障費の対 GDP 比率は EU 平均で29%というデータが出ています。その中でも30%を超える社会保障費率が高い国があります。代表的なのはフランス、デンマーク、フィンランドです。その一方、社会保障費用の比率が低い国の例としてはバルト三国やルーマニアなどの中東欧諸国全般です。

EU の社会保障制度の特徴は異なるレベルでの対応が行われていることです。加盟国レベルでは、社会保障制度の給付と設計実施が行われ、EUレベルでは加盟国レベルでの社会保障制度の調整と実施のモニタリングが行われています。リスボン戦略以降、開放型政策調整(OMC)と呼ばれる政策が採られるようになりました。

EU の社会保障政策の課題は EU の社会保障政策が4層構造で行われていることに起因します。4層構造とは、①EU レベル ②加盟国レベル ③地方レベル ④市町村レベルです。

どのレベルが社会保障政策を実行するにあたり、相応しいのか公平性を確保するにはどのようにすればいいのかユーロ危機での対応を行うにはどうすればいいのかといった課題が浮かび上がっています。

2019年欧州議会選挙

話を欧州議会選挙に移したいと思います。2019年5月23日から26日まで欧州議会選挙が行われました。

欧州議会選挙のシステム

欧州議会選挙は5年ごとに実施され欧州議会議員は各加盟国において直接選挙によって選出されます。各加盟国の人口比に応じて、国別の議員数が決定され定数は751名、任期は5年です。

選挙方法は各国で異なり投票日、投票時間、選挙結果公表時間などは各国によってバラバラで、選挙制度も各国で異なります。選挙制度も異なっていて、比例制度での非拘束式を取る国もあれば、拘束式名簿を取る国などもあります。

2019年に行われた欧州議会選挙では国ごとの議席数はこれまで通り人口比で決定され、一番多くの国では96議席、一番少ない国では6議席が割り振られています。

欧州議会の議員は議会において政治会派に所属して活動します。政治会派は少なくとも7カ国25人の議員の所属がなければなりません。主な政治会派は4つあります。欧州人民党、社会民主進歩同盟、刷新欧州グループ、欧州保守改革グループです。

欧州議会の投票率は低下傾向でしたが近年持ち直しています。1979年の欧州議会選挙では61.99%の投票率でしたが、2014年42.61パーセントにまで下落していましたが、今回は50.62%まで持ち直しました。

 EU 市民は EU 市民権の一部として出身国ではなく居住国で選挙に登録を行い選挙権と被選挙権を行使することができます。

EU 市民であれば議員候補者に国籍条項はありません。例えば1994年の選挙でフランス人のモーリス・デュベルジェがイタリア選挙区で当選したことがあります。

国別の選挙結果

2019年の国別の選挙結果を見てみると、フランスでは極右政党が一番議席数を確保しました。イギリスでは離脱の党=Brexit Party が一番多くの議席を獲得しました。ドイツでは、CDU / CSU が多くの議席を獲得しました。

まとめ:2019年欧州議会選挙の結果が持つ意味

2019年の選挙は親EUと反EUの戦いだと言われていました。実際、フランスでは実際にポピュリズム政党が躍進しました。

しかし、全体の結果を見渡すと、ポピュリズム政党はそれほど議席を伸ばすことはありませんでした。これにはEU市民の多様化する価値観を反映した結果になったと考えられています。

2019年の欧州議会の総選挙は、2014年より高い投票率を得ました。EU 市民のポピュリズム躍進への危機感が選挙へと足を運ばせたものと思われます。