EUの共通移民政策と難民問題について解説

EUの共通移民政策と難民問題について解説

EU による共通移民政策

EUの移民の歴史

EU 内での移民の歴史をご紹介します。1950年代南イタリアから他の西洋諸国への移住が盛んになります。1960年代は西洋諸国が労働力不足に陥ったため、EU域外から大規模に移民を受け入れました。

例えば、フランスは旧植民地から移民を受け入れ、西ドイツではトルコやユーゴスラビアなどから数百万単位で移民を受け入れました。その一方、スペイン、ポルトガル、ギリシャ、アイルランドは自らの国から他の西欧諸国へと人々が流出して行く移民流出国でした。

1970年代西洋の経済成長率の低下に伴って、移民は抑制され、1989年高等教育資格の相互承認によって専門家が EU 域外から EU 諸国での開業が可能になりました。ここでの専門家とは、医者、看護師、会計士、薬剤師などです。しかし、このタイミングでは一般労働者の移動増大措置は取られませんでした。

未完成の単一労働市場と移民

現在でもEU内で単一労働市場は完成していません。この背景には加盟国間で最低賃金法、雇用・解雇規定、労働時間、社会保障の制度が異なっていることが挙げられます。こうした法律の違いや複雑な制度が国境を越える移動を制限しているのです。

しかし、それでもEU内への移民は近年になって急増しています。2017年には EU 非加盟国から EU 域内への移民が240万人にのぼりました 。これに伴って、EU 域内で、EU市民ではない人は2230万人にものぼっています。これを受け、EU 加盟国は EU 市民権を825,000人に付与しています。 

EUの共通移民政策への取り組み

EU 共通移民政策への取り組みを見てみましょう。1999年、域内人口移動増加を受けて 、EU は共通移民政策の構築に向けたタンペレプログラムを採択します。

このタンペレプログラムはその後、「ハーグプログラム」へと姿を変え、合法・非合法移民に関する EU 共通移民政策策定への基礎となりました。

ただし、移民政策の分野では規制や統合は目指されておらず、緩やかな法形式をとっています。合法の移民に対しては可能な限りEU 加盟国国民と同等の権利と義務を与える方針が取られる一方、非合法移民に対しては取り締まりの強化及び本国への送還を行う方針でいます。

2005年5月に体外国境管理体制の統一性を高めるためにポーランドのワルシャワに欧州対外国境管理協力機関が創設されました。この欧州対外国境管理機関の主要任務は加盟国が国境管理監視を遂行するにあたっての協力体制の整備が主な任務です。

欧州国境沿岸警備機関の設立もなされました。2016年10月6日に欧州国境沿岸警備機関は先ほど紹介した欧州以外国境管理協力機関の権限の強化・拡大し、名称を変更したものとして成立しました。常駐する職員の数は2倍以上に増加し対外国境での業務を展開しています。

政策形成だけではなく、EUは移民を送り出している国への財政支援も行なっています。この財政支援政策の背景には、移民を送り出している国の貧困状況を改善することで不法移民を減少させるという考えがあります。

例えば、アフリカ諸国の雇用創出とインフラ整備のための支援を行っています。移民を送り出している国に EU が働きかけることによって出国管理をさせることが大きな目的なのです。 EU のは域外からの不法移民と難民の多くは海上ルートで欧州、特にスペインやイタリア、マルタ沿岸に漂着しています。

EUと難民

話を移民から難民に移したいと思います。

難民とは

まず難民条約(正式名称:難民の地位に関する条約)での難民の定義をご紹介します。

難民とは

人種、宗教、国籍もしくは特定の社会的集団の構成員であり、また、政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるために、国籍がある国の外にいる者(無国籍者や国に帰ることを望まない者を含む)

のことを言います。

この難民に対しては、「ノンルフールマン原則」が適用され、人道的立場から南民は自国で受け入れるか安全な第三国へと引き渡さなければなりません。

EUの取り組み

この難民問題に対して EU がどのような取り組みをしてきたかご紹介します。EUは2000年に欧州難民基金を創設し、2003年には庇護申請を繰り返すasylum-shoppingを防止するためのコンピューターシステム「EURODAC」が運用を開始しました。

2009年 、リスボン条約で、EU が庇護、補完的保護及び保護に関して共通政策を発展させることが規定されました。2010年には欧州庇護支援事務所がマルタのバレッタに設置され、2014年庇護・移住・統合基金が創設されました。

 EU に流れ込む難民は急増しています。2014年には184,665人が難民として認定され、その中でも最も多くの難民が押し寄せたのはドイツでした。多くの難民を出している国をあげるとシリア、エリトリア、アフガニスタン、イラク、イランなどがあります。2015年には75万人以上が海上ルートでヨーロッパへと渡ってきました

難民に対して EU は旧社会主義国からの亡命者や紛争地帯からの移民は手厚く保護し救済の対象としてきました。移民に対しては EU 加盟国が様々な問題を抱えており、包摂と排除の二つの傾向が存在しています。

2015年9月22日、EU加盟国は今後2年間で12万人の難民受け入れを分担することで合意しました。これは第二次世界対戦後最大規模の難民流入を受け 、EU の対応強化の分担は加盟国による多数決で承認されたのです。

ただし、ハンガリーとチェコ、スロバキア、ルーマニアの4カ国が反対票を投じました。難民受け入れに反対するハンガリーではハンガリーとセルビアの国境177 km に高さ3.5メートルの有刺鉄線付きフェンス設置プロジェクトが進行しています。

2015年11月29日ではトルコと加盟28カ国との首脳会議をブリュッセルで開催し多数のシリア難民が欧州に押し寄せる難民危機を巡って連携を拡大することで一致しました。しかし、この背景には多くのEUへの難民の通り道となっているトルコに難民防波堤としての役割を告げたものといえるでしょう。

2018年6月29日 EU 難民問題に関する合意では加盟国による自主的難民審査施設の設置、EU域外での難民審査施設の検討、 EU の難民受け入れルール見直しは先送りすることが合意され、難民問題は依然として EU 内での連帯が試される政策分野となっています。