EUの市場統合とイギリスのEU加盟について

EUの市場統合とイギリスのEU加盟について

 EU の市場統合

そもそもEUは経済的な協力のために統合を開始しました。経済協力を進めた結果、域内市場も統合されることになります。域内市場統合の目的は欧州経済共同体の目的と等しいものでした。

その目的が明記されたのが、ローマ条約第2条です。それによれば「共同体全体の経済活動の調和した発展、持続的かつ均衡のとれた拡大、安定強化、生活水準の向上促進及び加盟国間の関係のなお一層の緊密化を図ること」と述べられています。

この目的を達成するために二つの方法が提言されています。一つ目が国境を解放して、ECの中で人・モノ・サービスが自由に移動できるようにすること。二つ目が共通の政策や財政手段を持つことで加盟国間の連帯を築くことです。

EU統合までの流れ

欧州委員会委員長であるウォルターホールシュタインが 共同市場実現のための行動を開始しました。

1985年から1995年まで欧州委員会委員長を務めたジャックドロール時代の1985年に域内市場白書が発表されました。この頃から市場統合への動きが活発になり、単一市場への実現へとEUは進んでいきます。

1988年のチェッキーニ報告により市場統合による経済的な利益が提示され、欧州司法裁判所による判例の蓄積によって、EU法と加盟国国内法の融合がなされました。

十分な下地が整えられた結果、1987年単一欧州議定書が発効されます。これにより、域内市場の完成がEU統合の最大の目的であることが示されました。多くの分野が全会一致から特定多数へと変更され、ヨーロッパ市場における市場統合が最大の目的として掲げられたわけです。

1985年の域内市場白書においては、297の提案と実施のためのタイムテーブルが示され市場統合が高らかに宣言されました。同白書では1992年に域内市場完成を目標として掲げ、そのための施策が提案されました。

第1章では「国境での物理的な障壁をどのように取り除くのか」、第2章では「モノとサービスに関する貿易上の技術的障壁をどのように取り除くのか」、第3章では「金融面での障壁をどのように取り除くのか」などが提言されました。

その結果ヨーロッパは1992年ブームとなりヨーロッパ統合はより深まっていきます。市場統合後の為替の障害を除去するために統一通貨を作ることへの動きも活発することになりました。

市場統合のメリット&デメリット

市場統合のメリットは、巨大な経済圏を作り出すことができる点があります。EUという地域連合体を作り出すことによって世界経済でアメリカとほぼ肩を並べる経済圏が出現しました。EUのGDPは2017年は27兆3000億ドルと言われています。経済的なメリットに加えて、市場統合を通じて欧州統合が深まったり、市場の自由化や非関税障壁が撤廃されたり、安全と環境に関する各国の国内法の調和がされたり、人の移動の自由が認められたりしたことが挙げられます。

しかし、市場統合によるデメリットも存在します。加盟国間での格差や国境管理が消滅したことの治安の悪化、統合が完了した分野と未完了の分野での経済的な格差などが市場統合のデメリットとして考えられています。

イギリスのEC加盟とはなんだったのか

話は変わって、イギリスの EC 加盟についてお話をします。イギリスはなぜ EU に加盟したのでしょうか。イギリスは第二次世界対戦後ヨーロッパ大陸での欧州統合に対してとても冷たい態度をとっていました。それは地理的な理由、歴史的な理由、精神的な理由、経済的な理由と様々な理由が考えられます。

イギリスがECに加盟するまでの流れ

しかし、1961年8月マクミラン政権の時にイギリスはEEC加盟を申請します。その動機として考えられたのは、経済的動機、政治的動機、対外的動機などの様々な理由がありました。

しかし、1963年のフランスのドゴール大統領による本申請の拒否があり、イギリスはその申請を取り下げざるを得ませんでした。 1967年5月イギリスは再びEEC加盟を申請します。しかし、今回もドゴール大統領による拒否権が発動されてスムーズな申請認可とは行きませんでした。

1969年12月ドゴール大統領が退陣し、ハーグ首脳会議での拡大原則の承認が行われ、1972年1月12日にイギリスの加盟条約調印がなされました。1973年の1月にはデンマーク、アイルランドと共に EEC に加盟することになります。 しかし、イギリスの中にはやはりEUに対して懐疑的な人たちは一定数存在しています。それを示すように、1975年6月5日にはイギリスで EC 残留を問う国民投票が行われました。しかしこの時は残留派が67.2%で多数となり ECへの残留が決まりました。

イギリスとオプトアウト(適用除外)

イギリスは EUに加盟しましたが、その中でも不参加を決定した項目があります。これをイギリスのオプトアウトと呼びます。イギリスの例はオプトアウト(適用除外)を認める可変的で加速度的な統合を行っていくための先例として考えられています。

イギリスがオプトアウトをした項目は、欧州通貨制度、社会憲章、シェンゲン協定の三つです。イギリスの EU 内での立場というのは EC 加盟によってかつてのアウトサイダー的な立場からインサイダーへと転換していきました。イギリスにはパクスブリタニカの残存意識があり、EUの中で大国主義的な振る舞いをすることもしばしばです。EU 内での協調とアメリカとの特別な関係の狭間で葛藤しているのです。