欧州通貨危機についてわかりやすく解説

欧州通貨危機についてわかりやすく解説

ギリシャから出た火種

2009年10月にギリシャで新政権が発足します。ここで明らかになったのは財政赤字の嘘でした。旧政権が発表していた財政赤字は3.7%でしたが、実際は13.6%だったのです。ギリシャ政府の支払い返済能力が問題になりました。これをギリシャ危機と言います。

2001年ユーロ加盟を果たしたギリシャはこれ以前に虚偽の報告書を EU に提出していました。2009年10月にパパンドレウ党首を首相とする全ギリシャ社会主義運動党政権が発足し、ギリシャ危機が明るみに出ます。

ギリシャがデフォルトすればどうなるのかについて、既存の法律では規定はありませんでした。しかし、当時の他の南ヨーロッパ諸国にも対 GDP 比二桁の財政赤字が存在しており、素早い対応が求められました。2010年5月、金融市場はパニックに陥りユーロは下落株価暴落は日米にも波及しました。

 EU 加盟国で財政危機を迎えた諸国をGIIPSと言います。ギリシャの例では、2010年春、ギリシャの債務コストが維持不能レベルになり、ギリシャ危機が EU 全体に伝播する可能性が存在しました。国際通貨基金 IMF と協調して1100億ユーロの緊急支援パッケージを一時支援として運用します。これによってギリシャは年金改革増税を盛り込んだ緊縮財政政策の運用を開始します。

ギリシャ危機の展開

政府は緊縮策や財政再建策を進めましたが、構造改革や民営化措置の遅れ、緊縮策の影響から景気後退が続き、財政再建に遅れが出始めます。財政赤字削減に向けた緊縮策の影響もあり経済の落ち込みも激しく、2012年の経済成長率はマイナス6.4%、危機発覚前(2009年9月)の失業率が9.1%のところ、2013年8月になんと27.3%まで上昇しました。これに対し、2012年3月に1410ユーロの第2次支援が行われました。

その後2015年1月25日以降は反緊縮財政を掲げる政党急進左派連合SYRIZAが与党となり緊縮財政を進める EU との交渉合意が困難になりました 。

ギリシャ以外の国はどうだったか

アイルランド

2008年のリーマンショック以前はケルトの虎としてアイルランドは堅調な経済政策をとっていました。しかし、2010年に住宅バブルがはじけると銀行が慢性的に負債を抱えるようになります。これによってムーディーズによる格付け引き下げが行われ、2010年11月には EU と IMF 手動のアイルランド支援として900ユーロの融資が決定されました

ポルトガル

ポルトガル経済は従来から EU 依存型の経済システムをとっていました。2011年5月ポルトガル政府が欧州委員会、欧州中央銀行、国際通貨基金と合意した財政再建プログラムの下3年間で総額780億ユーロの融資を受けることが決定されました。

2014年5月17日ポルトガルへ金融支援が終了すると、ポルトガルは所得税の引き上げ、公営企業の民営化公共事業の削減といった政策を実施し財政再建が進み、国債発行が再開されます。

スペイン

ギリシャ債務問題の波及を受け、スペイン政府は財政問題の根本的な解決に向けて財政赤字を引き下げることを目標とします。付加価値税の増税、公務員給与の削減、公共投資を大幅削減を含む財政赤字削減策を実行しました。

2013年6月スペイン政府は EU に対しスペイン金融機関への支援を要請します。これを受け、EU は政府ではなく金融機関の直接支援に乗り出したのです。

このように複数の国家にでユーロ危機は発生しました。これに対して EU は対処策として二つの基金を設立します。一つ目が欧州金融安定メカニズムです。これによって、EU 予算を担保に調達する総額600億ユーロの基金が設立されたことになります。二つ目の基金が欧州金融安定基金です。EU 加盟国が債務保証を行う4400€の基金が設立されたのです。

これら二つの基金を収束・拡大した欧州安定メカニズム(ESM)が形成され、ESMでの融資可能額は5000億ユーロに上ります。ESM運用のため2012年6月にはリスボン条約が改正され財政均衡目標を国内で充分審議することを法律の中に盛り込むことにしました。

まだまだ続くEUの救済策

ヨーロピアンセメスターは経済ガバナンス強化策、マクロ経済の不均衡、構造改革、財政政策・予算の監視制度などが盛り込まれ、2011年1月に発行されました。

ユーロプラス協定は2011年3月当時のユーロ圏17カ国にブルガリア、デンマーク、ラトビア、リトアニア、ポーランド、ルーマニアを加えた23カ国がユーロプラス協定に調印します。目的は競争力と経済修練のための経済協調の補強でした。

ユーロ危機の教訓から金融部門の規制と監督の不十分さが明らかになりました。これによって EU は銀行同盟を設立します。この銀行同盟は3つの柱からなります。1つ目が単一監督メカニズム、2つ目が単一破綻処理メカニズム、3つ目が預金保険制度です。

銀行同盟の成立によってユーロ圏の金融政策を担う欧州中央銀行に新たな権限である単一の監督権が付与されます。欧州中央銀行はユーロ圏すべての国の銀行の監督責任を持ち、規定の自己資本要件に違反する危険性のある銀行に早期に介入し是正措置を要求しました。