日韓関係の歴史とその危機について

日韓関係の歴史とその危機について

この記事では、日韓関係について解説しています。戦後最悪とも言われる現在の日韓関係。いがみ合う両国の関係はどこから始まったのか?なぜこんなにもいがみ合うのか?日韓関係の起源に迫ります。

日韓基本条約の締結

日本がアジア・太平洋戦争に敗戦し、約20年。日本と韓国が戦後に新しい関係を結ぶまでは非常に長い年月がかかりました。日韓関係がいかに難しいものであったかがわかります。

1965年に日韓基本条約が結ばれることで日韓の間には対等な関係がようやく結ばれました。

日韓基本条約に際して問題となったのが1910年の韓国併合条約の適法性でした。合法的に統治したのだから、45年までは合法だったと考えるのが日本であり、1910年に遡って無効だと主張するのが韓国の立場でした。結果的に条文には「もはや無効」という玉虫色の条文が記載され、問題は棚上げされました。

日本側から韓国側への「お詫び」は表明されず、歴史問題の解決が図られることはありませんでした。

日韓基本条約を結ぶ上で仲介役を果たしたのがアメリカでした。当時のアメリカはベトナム戦争に参戦し、厳しい戦いを行なっていました。アメリカにとって同盟国である日韓が正常な関係にないことは都合が悪かったのです。日韓基本条約は日韓の関係だけでなく、日米韓の関係を規定したと言えるでしょう。

アメリカが仲介をする中で日韓は歴史問題を棚上げ、「経済協力方式」と呼ばれる経済面で協力する道を採ります。こうして結ばれた日韓基本条約の主な項目は以下のようです。

  • 請求権及び経済協力協定(無償3億、有償2億ドル+商業借款)
  • 漁業協定
  • 在日韓国人の法的地位及び待遇に関する協定
  • 文化財及び文化協力に関する協定
  • 紛争解決に関する交換公文(領土問題)

この中でも問題になっているのが、請求権協定ならびに経済協力協定の第二条です。「完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する」との解釈が問題になったのです。現在の徴用工問題の起源がこの条文の解釈にあるのです。

日韓基本条約は日韓同士の「戦後和解」が不徹底に終わったことで将来に歴史問題の解決を先送りしました。

しかし、日韓基本条約で得た日本からの資金を活用し、韓国は驚異の経済発展を果たします。韓国が経済発展することは日本にとっても経済面でメリットがありました。日米韓の共同繁栄の時代が始まったのです。

新たな日韓関係へ「日韓共同宣言」

1965年の日韓基本条約に基づく「日韓基本モデル」が21世紀を迎える中で新たな日韓関係を構築するべきであるとして、1998年10月には「日韓共同宣言」が採択されました。

当時の韓国大統領・金大中大統領は日本と非常に良好な関係だったことから実現したと言えるでしょう。

この日韓共同宣言は両国が未来志向の関係を築くためのベンチマークになる宣言です。

日本が韓国に対して、過去の植民地支配を「多大の損害と苦痛を与えた」として、お詫びの文言が含まれたことは画期的でした。日本政府が韓国との共同文書の中で公式に謝罪したのです。

一方の韓国側は日本の戦後の取り組みを評価する内容が含まれています。戦後、驚異的な経済復興をしたこと、国際貢献を進めたこと、民主主義が定着したことなどを評価し、双方がお互いの立場を認めました。

「98年体制」と言っても過言ではないほど日韓関係史において画期的な出来事を示し、日本の歴史的反省と謝罪が後回しにされた「65年体制」の欠陥を補ったものとして受け止められました。

現在の日韓関係について詳しく

1965年の国交正常化以来、日韓完泳は歴史問題・領土問題をめぐり、対立してきました。しかし、安保経済協力や人的・文化的交流の拡大を通じて友好関係を構築してきたことも事実です。

歴代の日韓政権は歴史問題・領土問題が日韓関係の発展を阻害しないように状況を管理してきました。日韓にアメリカを加えた3カ国関係は北東アジアの安全保障の要になってきており、日韓関係から日本と韓国は利益を得てきました。

しかし現在の日韓関係は非常に危機的です。この背景には李明博政権の末期以来、日韓関係が悪化しているにも関わらず、その管理方法や改善のための代替案が提示できていないことがあります。

日韓両国を取り巻く周辺環境の変化がその要因として考えられます。アメリカは国際的地位の低下や中国の急激な台頭、北朝鮮の核問題などによる世界情勢の変化のために、今後の世界秩序について日韓の間で見解を異にしているからです。

日韓の国内政治で歴史問題に対する大衆迎合的な政治が台頭したことも日韓関係をこじれさせた問題であると言えるでしょう。

安定政権の安部政権のもとでも歴史修正主義的傾向や韓国政府の歴史問題に対する強硬な態度が日韓関係を未来志向から過去志向へと回帰させたのです。

特に現在の文在寅政権は「親日清算」を全面に押し出し、大統領選挙では慰安婦合意の「再交渉」を主張し、就任後は慰安婦合意の検証を行い、「和解・癒し財団」を解散させました。韓国大法院の「徴用工」判決を尊重し、歴史問題での日本への対決姿勢を崩していません。

その中でも日韓両国民の中で嫌韓や親日などの二項対立的な国家認識が存在しており関係悪化に拍車をかけています。これにはメディア環境が影響していると言われています。これまでのマスメディアからSNSやインターネットの空間が発達し、日本と韓国の中で双方の嫌悪感情がより増幅しやすくなっています。この世論から政治が自由になることができないジレンマが生じました。

2015年末の慰安婦合意は日韓両国の関係性が疲弊しきった状態で結ばれました。結果的に合意は破綻し、より一層日韓関係が混迷を極めました。

韓国大法院の「日帝強制徴用被害者(元徴用工)に対する日本企業の損害賠償判決」では日韓双方に大きな反響が生じました。日本政府自身は請求権協定以来、常に個人請求権が解決された立場を堅持してきましたが、韓国大法院の判決は政府の解釈を覆しました。

日本政府と韓国司法との間で請求権協定の解釈において不一致し、両国間で解決策の話し合いが難航しています。

しかし、文在寅政権は「ツートラック」の必要性を認識しており、歴史問題とそれ以外は同時並行的に進めるべきだとの方針を日韓両国がすり合わせることができるのでしょうか。

20年間で日韓の貿易総額は2倍以上、人的交流は3倍以上になりました。懸案を抱えつつも目覚ましい発展を遂げてきたのです。

一時期不幸な関係にあった2カ国が対等なパートナーとして緊密に協力し共に繁栄した日韓関係は「日韓モデル」として世界に示すことができる可能性があります。50年以上にわたり築かれてきたこの関係はさらに成熟できる可能性があります。

国家関係が悪化しても相手国にいる知人の「個人の顔」をすぐに目に浮かべることができるなら無用な反感は生まれないだろう。

国民間の相互認識の改善には時間がかかります。粘り強く有効の種を撒き続けることが重要です。

【付録】本文で紹介した宣言文の一部抜粋

日韓基本条約(抜粋)

第一条 

両締約国に外交及び領事関係が開発される。両締約国は大使の資格を有する外国使節を遅滞なく交換するものとする。また、両締約国は、両国政府により合意される場所に領事館を設置する。

第二条

1910年8月22日以前に大日本帝国と大韓帝国との間で締結されたすべての条約及び協定は両国政府により合意される場所に領事館を設置する。

第三条

大韓民国政府は国際連合総会決議195号に明らかに示されている通りの朝鮮にある唯一の合法的な政府であることが確認されている。

請求権並びに経済協力協定(抜粋)

第一条

日本国は大韓民国に対し、現在において1080億円に換算される3億合衆国ドルに等しい円の価値を有する日本国の生産物及び日本人の役務を、この協定の効力発生の日から10年の期間にわたって、無償で供与するものとする。

現在において720億円に換算される2億合衆国ドルに等しい円の額に達するまでの長期低利の貸し付けで大韓民国政府が要請し、かつ、3の規定に基づいて締結される取り決めに従って決定される事業の実施に必要な日本国の生産物及び日本人の役務の大韓民国による調達に充てられるものをこの協定の効力発生の日から十年の期間にわたって、行うものとする。この貸し付けは日本国の海外経済協力基金に行われるものとし

第二条

両締約国は、両締約国及びその国民(法人を含む)の財産、権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が、1951年9月8日にサンフランシスコ市で署名された日本国との平和条約第四条aに規定されたものを含めて、完全にかつ最終的に解決されたこととなることを確認する。

日韓共同宣言(1998.8)

・我が国が過去の一時期に韓国国民に対し植民地により多大の損害と苦痛を与えたという歴史的事実を謙虚に受け止め、これに対し、痛切な反省と心からのお詫びを述べた。

・小渕総理大臣の歴史認識の表明を真摯に受け止め、これを評価すると同時に両国が過去の不幸な歴史を乗り越えて和解と善隣友好協力に基づいた未来志向的な関係を発展させるためにお互いに努力することが時代の要請である旨表明した。