金正日時代から金正恩時代への移行について

金正日時代から金正恩時代への移行について

この記事では金正日から金正恩時代の体制移行について解説しています。金正日から金正恩への権力移行は金正日の死によって行われます。

共産主義としては異例の3代続く世襲を実現した流れを確認して、北朝鮮政治への理解度を深めましょう。

金正日の死と権力移行

2008年夏、北朝鮮の最高指導者・金正日が脳卒中で倒れます。金正日は自らの残りの人生が長くないことを悟ります。急ピッチで後継者選びが進められました。

2008年末には現在の最高指導者・金正恩が後継者に内定したとされています。高家者選びの当初は2017年にシンガポールで暗殺された金正男氏が有力な後継者と見られていましたが、政治への姿勢などを勘案され、金正恩が後継者となりました。

2010年3月には第3回党代表者大会で党中央軍事委員会副委員長となりました。2011年12月に金正日が死去するまでの間、金正恩は2010年3月に天安号沈没事件、2011年11月には延平島砲撃事件を指導したと言われ、権威づけのためであったと言われています。

2011年12月17日に金正日が死去すると金正恩への権力移行がスムーズに進みます。朝鮮人民軍最高司令官に推戴されると、2012年4月の第4回党代表者会で朝鮮労働党「第一書記」、2012年4月に最高人民会議で国防委委員会「第一委員長」、2016年5月には第7回党大会が36年ぶりに開催され、朝鮮労働党「委員長」に就任しました。2016年6月には最高人民会議で「国務委員長」に就任しました。

核・ミサイル開発の進展

権力移行と並行して核・ミサイル開発も進展します。2013年3月には党中央委員会全員会議で「経済建設と核武力の並進路線」を採択し、経済建設と核ミサイル開発を同時並行で進めることが目指されました。

2013年5月には経済開発区を設置し、経済開発への姿勢を見せます。2013年2月には第3回、2016年1月に第4回、2016年9月に第5回、2017年9月第6回の核実験を行います。

2017年11月にはついに「国家核武力」が完成したとして、北朝鮮は核保有国となったのです。

2018年の局面転換は用意されていた?

2018年、金正恩委員長は最高指導者として恒例の「新年の辞」を行います。そこで述べられたのは南北の融和を目指したいというものでした。

平昌オリンピックから逆算して核ミサイルを開発して一番利益が多いところで対話モードに持っていくことを計算していたと考えるべきです。

2018年1月9日には南北行為級会談が行われ、南北6項目合意が結ばれました。この6項目は以下のようです。

  • 4月末に板門店「平和の家」で南北首脳会談を実施すること
  • 南北首脳間のホットラインを設置し、首脳会談前に電話会談を実施すること
  • 北朝鮮は朝鮮半島非核化に向けた意思を明らかにした。その条件として北朝鮮に対する軍事的脅威が解消され、体制安全が保障されるなら、核保有する理由がないことを明確にした。
  • 非核化問題協議および米朝関係正常化に向けて米国と虚心坦懐に対話する用意を表明した
  • 対話が続く間、追加実験、弾道ミサイル試験発射など戦略的挑発を再開しないことを明確にした。核兵器はもちろん通常兵器を韓国に向かって使用しないことを確約した。
  • 南北和解協力雰囲気維持のために韓国テコンドー演武団と芸術団を平壌に招待するとした。
  • 以上に加えて、「朝鮮半島非核化は先代の遺訓である」とした。

これを受けて、2018年4月28日に板門店で金正恩委員長と文在寅大統領が会談しました。これを受けて板門店宣言が採択されました。

板門店宣言の大きな柱は3つあると考えられています。

1つ目:南北関係の改善

2つ目:軍事的な緊張緩和

3つ目:平和体制の構築

以下に板門店宣言の全文を掲載します。

朝鮮半島の平和と繁栄、統一のためのパンムンジョム宣言
大韓民国のムン・ジェイン大統領と朝鮮民主主義人民共和国のキム・ジョンウン国務委員長は、平和と繁栄、統一を願うすべての同胞のいちずな願いを込めて、朝鮮半島で歴史的な転換が起きている意味深い時期である2018年4月27日に、パンムンジョムの「平和の家」で、南北首脳会談を行った。

両首脳は、朝鮮半島にもはや戦争はなく、新たな平和の時代が開かれたことを8000万のわが同胞と全世界に厳粛に宣言した。

両首脳は、冷戦の産物である長年の分断と対決を一日も早く終息させ、民族的和解と平和繁栄の新しい時代を果敢につくり出し、南北関係をより積極的に改善し発展させなければならないという確固たる意志を込めて、歴史の地、パンムンジョムで次のように宣言した。

1.南と北は、南北関係の全面的で画期的な改善と発展を成し遂げ、途絶えた民族の血脈をつないで共同繁栄と自主統一の未来を早めていく。

南北関係を改善して発展させることは、すべての同胞のいちずな望みであり、これ以上先送りできない時代の切迫した要求だ。

(1)南と北は、わが民族の運命はわれわれがみずから決定するという民族自主の原則を確認し、すでに採択された南北宣言とすべての合意などを徹底的に履行し、関係改善と発展の転換的局面を切り開いていくことにした。

(2)南と北は、高官級会談をはじめとする各分野の対話と協議を早い時期に開催して、首脳会談で合意された問題に取り組むための積極的な対策を立てていくことにした。

(3)南と北は、当局間協議を緊密にし、民間交流と協力を円満にすることを保障するため、双方の当局者が常駐する南北共同連絡事務所をケソン(開城)地域に設置することにした。

(4)南と北は、民族的和解と団結の雰囲気を高めていくために、各界各層の多面的な協力と交流往来と接触を活性化することにした。

対内的には、6・15(2000年6月15日の南北共同宣言)をはじめ、南と北にとって同じように意義がある日を契機に、当局と国会、政党、地方自治体、民間団体など各界各層が参加する民族共同行事を積極推進して和解と協力の雰囲気を高め、対外的には、2018年アジア競技大会をはじめ国際大会に共同で出場して、民族の知恵と才能、団結した姿を全世界に誇示することにした。

(5)南と北は、民族分断で発生した人道的問題を至急解決するために努力し、南北赤十字会談を開催して離散家族・親戚の再会を含む諸問題を協議し、解決していくことにした。

さしあたって、来る8・15(8月15日)を契機に、離散家族・親戚の再会を進めることにした。

(6)南と北は、民族経済の均衡的発展と共同繁栄を実現するために、10・4宣言(2007年10月4日の南北共同宣言)で合意された事業を積極推進していき、1次的にトンヘ(東海)線およびキョンウィ(京義)線鉄道と道路を連結し、現代化して活用するための実践的対策を取っていくことにした。

2.南と北は、朝鮮半島で先鋭化した軍事的緊張状態を緩和して、戦争の危険を実質的に解消するため、共同で努力していく。

(1)南と北は、地上と海上、空中をはじめとするすべての空間で、軍事的緊張と衝突の根源となる相手に対する一切の敵対行為を全面中止することにした。

さしあたって、5月1日から軍事境界線一帯で拡声器放送とビラ散布を含むすべての敵対行為を中止して、その手段を撤廃し、今後、非武装地帯を実質的な平和地帯とすることにした。

(2)南と北は、黄海の北方限界線一帯を平和水域にして、偶発的な軍事的衝突を防止し、安全な漁労活動を保障するための実際的な対策を打ち立てていくことにした。

(3)南と北は、相互協力と交流、往来と接触が活性化することによるさまざまな軍事的保障対策を取ることにした。

南と北は、双方の間で提起される軍事的な問題を遅滞なく協議解決するために、国防相会談をはじめとする軍事当局者会談を頻繁に開催し、5月中にまず、将官級軍事会談を開くことにした。

3.南と北は、朝鮮半島の恒久的で強固な平和体制構築のために積極協力していく。

朝鮮半島で非正常な現在の停戦状態を終息させ、確固たる平和体制を樹立するのは、これ以上先送りできない歴史的課題だ。

(1)南と北は、いかなる形態の武力も互いに使用しないという不可侵合意を再確認して、厳格に遵守していくことにした。

(2)南と北は、軍事的緊張が解消されて互いの軍事的信頼が実質的に構築されることによって段階的に軍縮を実現していくことにした。

(3)南と北は、休戦協定締結65年になることし、終戦を宣言して停戦協定を平和協定に転換し、恒久的で強固な平和体制構築のために、南・北・米の3か国、または南・北・米・中の4か国の協議開催を積極推進することになった。

(4)南と北は、完全な非核化を通じて、核のない朝鮮半島を実現するという共通の目標を確認した。

南と北は、北側が取っている主導的な措置は、朝鮮半島の非核化のために非常に大きな意義があり、重大な措置だという認識をともにし、今後それぞれが、みずからの責任と役割を果たすことにした。

南と北は、朝鮮半島の非核化のための国際社会の支持と協力のために積極努力することにした。

両首脳は、定期的な会談と直通電話を通じて、民族の重大事を随時、真剣に議論し、信頼を強固にして、南北関係の持続的な発展と朝鮮半島の平和と繁栄、統一に向けたよい流れをさらに拡大していくために、一緒に努力することにした。

さしあたってムン・ジェイン大統領は、ことし秋にピョンヤンを訪問することにした。

2018年4月27日
パンムンジョム

大韓民国大統領ムン・ジェイン 朝鮮民主主義人民共和国国務委員会委員長キム・ジョンウン