【ルポ】北朝鮮の姿を丁寧にリポートする

【ルポ】北朝鮮の姿を丁寧にリポートする

編集長のアキです。前編に引き続き、後編です。

前半の記事はこちら→【ルポ】韓国と北朝鮮の境界線はあまりに不気味だった

朝鮮戦争の激戦地から北朝鮮をみる

「都羅展望台」は「都羅山」の上にある。北朝鮮の姿を目の前で見ることができる展望台である。

38度線付近でひときわの高さを誇るのが「都羅山」。この「都羅山」はかつての朝鮮戦争の激戦地であった。戦争において背の高い山を掌握するのは基本的な戦術の一つである。

激戦の象徴「都羅山」 現在ではそこに韓国の展望台が設置されている。都羅山を韓国が制圧しているのである。これは朝鮮戦争後の北朝鮮と韓国の発展度合いを象徴しているのかもしれないと思った。

展望台を目指し、バスは急峻な山道を登っていく。急な坂道にくねり道あり。日光いろは坂や箱根の山道を思い起こさせるぐねり道だ。

到着した。

展望台の入り口

展望台に到着した。駐車場が広い。そこに多くのバスが止まっている。僕は少しげんなりした。多くのバスが止まっているってことはつまり多くの観光客がいる。じっくり北朝鮮を眺めたい僕にとって暗雲がたれ込む。

バスをおりる。少し歩くと人混みができている。その向こう側には北朝鮮があるのだ。

これが北朝鮮の姿である。画像のやや右に立っているのが北朝鮮国旗である。

あぁ。これが北朝鮮なのか。

険しい山々の合間を縫うように細々と街並みが広がっている。

南側に「見られる」38度線付近がこの程度の発展具合では「体裁」を気にする北朝鮮にとって、現実は厳しいことがよくわかる。

その山々はところどころハゲている。

日常的に木材を燃料に使っているからだろうか。

展望台には多くの望遠鏡が設置されている。日本円で50円で利用できるので、せっかくだから使ってみた。

細かく北朝鮮の街並みが見える。望遠鏡をぐるぐると回して楽しんでいると唐突に彼が現れた。

「金日成」である。大きな銅像が設置されているのである。北朝鮮を感じるには十分だった。

唐突に現れた中国人風のおばちゃん

引き続き望遠鏡を眺めていると、おばちゃんに「‼︎”#$%&’(dfghjんbvfryj$%379」と話しかけられた。多分中国人だ。めっちゃハイテンション。

「ちょっと望遠鏡見せてや。にいちゃん」とでも言っているのだろうか。僕は華麗にスルーした。

それにしてもこの展望台には観光客が多い。

この南北軍事境界線は悲劇の象徴のはずだ。でもその南側は完全な観光地になっているのである。

みんなおめでたい顔をして、北朝鮮を物珍しい顔で眺めているのである。

その姿をみて北朝鮮の人々はどう思うのだろう。勝手に戦争に巻き込まれて、分断されて、挙げ句の果てには全世界の人間から物珍しい顔で眺められるのである。

何という非情であろうか。僕は北朝鮮の人々に同情を禁じ得ない。

でもこの同情なんて特に意味はないんだ。

北朝鮮の人々は国家に洗脳されている。朝鮮民主主義人民共和国が素晴らしい国だと教えられている。それゆえに自分たちが、自分たちの国が世界中から好奇の目で眺められているなんて知らないんだ。

北朝鮮に暮らしている人々の数奇で虚無的な運命を僕は観光客の表情から感じたのである。

国家は何のためにあるのだろう。歴史の女神に翻弄され続け、南北に分断されてしまった朝鮮半島の悲劇が38度線にはある。

僕は多くの観光客がいる展望台に辟易としながら、次の目的地「都羅山駅」に向かったのである。

悲劇的な整然さ、綺麗さ。都羅山駅。

 

 

都羅山駅は韓国最北の駅。駅を貫く線路は北朝鮮につながっている。つながったのは金大中政権の時である。しかし、金大中政権以降の南北関係は冷え込んだ。結局、現在までほとんど使われることなく、不気味な静寂と整然さを持って、ひっそりと佇んでいた。使われていないのでとても綺麗だ。

 

今では1日に1本ソウルからの電車が来るだけであり、この駅で折り返す。北朝鮮には乗り入れていない。

南北融和の象徴になるはずの駅が宝の持ち腐れである。そもそも駅なのにバスで乗り付けて観光するというのがなんとも不思議ではないか。

いつかこの駅で電車の往来が活発になる時が来るのであろうか。その時はいつになるのであろうか。僕にはわからない。

観光と悲劇のはざま。

この38度線付近は朝鮮民族分断の象徴であり、悲劇の地である。しかし、その分断があまりに長い間固定化されたために、この38度線は観光地になり、その悲劇性が薄まってしまった。

国家のエゴで閉じ込められている人々を南側から興味深く眺める人が大勢いるのは何よりの悲劇だ。

この38度線が南北両国にとって、そしてもちろん旧宗主国・日本にとっても最善の形で解放されることを切に願いながら僕はこの地を後にした。