第二次核危機と日朝平壌宣言の採択について

第二次核危機と日朝平壌宣言の採択について

この記事では2000年から2010年にかけての北朝鮮を取り巻く政治状況について解説していきます。

史上初の南北首脳会談と日朝首脳会談、金正日の死など重要な出来事が相次いだ北朝鮮政治を読み解きます。

初めての南北首脳会談

1998年に就任した金大中韓国大統領は「太陽政策」と呼ばれる北朝鮮に対して融和的な政策を取っていました。就任直後から南北間の交流が活発化し、2000年3月、東西ドイツ統合の象徴の地・ベルリンで「ベルリン宣言」を発表します。このベルリン宣言では南北間の交流をより一層進めることを呼びかけました。このベルリン宣言が初めての首脳会談をもたらした大きな影響であったと考えられています。

2000年6月、史上初の南北首脳会談が行われました。2000年4月から南北は秘密裏に接触し、会談が実現しました。

採択された南北共同宣言では、南北間の協力をより一層進めることを確認し、共存を目的とした統一が必要であるとしました。(南北共同宣言全文は下にあります)

改善する米朝関係

金大中政権のもとで改善した南北関係に歩調を合わせるように米朝関係も改善します。2000年10月には趙明禄次帥が訪米し、当時のビル・クリントン大統領と会談します。北朝鮮高官がアメリカ大統領と会談する歴史的な瞬間が訪れました。これに際して、「米朝共同コミュニケ」が採択されました。

この米朝共同コミュニケでは昨年のシンガポール首脳会談よりもより具体的で包括的な内容が合意されました。(米朝共同コミュニケ全文は下にあります)

結果的にこの合意は履行が不十分なままになりますが、2000年10月にはオルブライト国務長官が訪朝するなど、良好な関係が続き、米朝関係は新しい時代に入ったかと思われました。

「9・11」と第2次核危機

米朝関係の潮目が変ったのが2001年9月11日でした。アメリカ同時多発テロの発生です。この惨事を受けて、発足したばかりのブッシュ政権はテロとの戦いを掲げ、北朝鮮をリビア、イラクと並んで「悪の枢軸」に指定します。

アメリカは北朝鮮に対して強硬な姿勢を取るようになります。それまで良好だった米朝関係は一転して緊張状態に陥りました。

テロとの戦いを掲げるアメリカはアフガニスタンとイラクに侵攻します。アメリカの強大な軍事力を目の当たりにした北朝鮮は様々な教訓を得ることになります。

北朝鮮の目標は何よりも現在の政治体制の維持です。そのためには核開発を急ぎ、イラクやリビアの二の舞になることを避けなければなりません。北朝鮮はこの頃から核兵器を捨てない意志を固めたと言われています。

2002年10月には北朝鮮のウラン濃縮計画が表面化する。これによって第二次核危機が発生します。アメリカはこれを受けて重油供給を停止し、ジュネーヴ合意枠組みは崩壊しました。

攻撃されないための日朝関係

悪化する米朝関係の中で北朝鮮は自分の安全を確保しなければなりません。そのために目をつけたのが日朝関係でした。当時の日米関係の蜜月ぶりを見れば、北朝鮮が日本と関係を改善することで東京経由でのワシントンとの対話ルートを確保しようとしたのです。

こうして2002年9月に電撃的に小泉訪朝、日朝首脳会談が実現します。こうして結ばれたのが日朝平壌宣言でした。

日朝平壌宣言では日本の北朝鮮への心からのお詫びを表明します。日韓方式による北朝鮮側への日本からの資金援助の明言し、どのような形で資金を援助するのかまで決められました。

平壌宣言が本気で国交正常化するために用意されたことがわかります。拉致問題はそのままの文言では書かれることはなく、北朝鮮側のメンツを立てた格好です。北朝鮮側は金正日の直接署名によるものであるから、北朝鮮側での重要性は非常に大きいです。

平壌宣言でクローズアップされたのが拉致問題でした。北朝鮮側は拉致問題を認め、日本との国交正常化交渉を加速させたいと考えていました。しかし、日本側は拉致被害者13人のうち8人が死亡しているとの北朝鮮側の説明を受けて、態度を硬化させました。

結果的に平壌宣言後の日朝関係は首脳会談前よりも悪化するという皮肉な状況となりました。

まとめ

こうして北朝鮮はアメリカとも日本とも関係性が悪化します。北朝鮮は自らの生き残りのために核兵器に固執するようになります。

かつては北朝鮮にとって核兵器は外交カードでした。しかし、この頃になると核兵器は安全保障上の抑止効果を持つ兵器として扱われるようになります。

このような北朝鮮の変化を受けて、周辺国は協力して北朝鮮問題に立ち向かおうとします。こうして結成されたのが6者協議です。6者協議については次の記事に譲りたいと思います。

【付録】本文で紹介した共同宣言や共同声明の全文

6・15南北共同宣言

南北共同宣言全文

祖国の平和統一を念願する全同胞の崇高な意思により、大韓民国の金大中大統領と朝鮮民主主義人民共和国の金正日国防委員長は、2000年6月13日から15日までピョンヤンで歴史的に対面し、首脳会談を行なった。南北首脳は分断の歴史上初めて開かれた今回の対面と会談が、互いの理解を増進させて南北関係を発展させて、平和統一を実現するのに重大な意思を持つと評価し、次のように宣言する。

1.南と北は国の統一問題を、その主人である我が民族同士で互いに力を合わせ、自主的に解決していくことにした。

2.南と北は国の統一のため、南の連合制案と北側のゆるやかな段階での連邦制案が、互いに共通性があると認め、今後、この方向で統一を志向していくことにした。

3.南と北は今年の8・15に際して、離散家族、親戚の訪問団を交換し、非転向長期囚問題を解決するなど、人道的問題を早急に解決していくことにした。

4.南と北は経済協力を通じて、民族経済を均衡的に発展させ、社会、文化、体育、保険[2]、環境など諸般の分野での協力と交流を活性化させ、互いの信頼を高めていくことにした。

5.南と北は、以上のような合意事項を早急に実践に移すため、早い時期に当局間の対話を開始することにした。

金大中大統領は金正日国防委員長がソウルを早急に訪問するよう丁重に招請し、金正日国防委員長は今後、適切な時期にソウルを訪問することにした。

2000年6月15日

大韓民国大統領 金大中

朝鮮民主主義人民共和国国防委員長 金正日

米朝共同コミュニケ

朝鮮民主主義人民共和国国防委員会金正日委員長の特使である国防委員会第1副委員長趙明禄副元帥が、2000年10月9日から12日まで、米国を訪問した。

訪問期間中、国防委員会金正日委員長が送る親書と米朝関係に対する彼の意思を、趙明禄特使が米国クリントン大統領に直接伝達した。趙明禄特使と一行は、マデレーン・オルブライト国務長官とウイリアム・コーエン国防長官をはじめとする米行政府の高位官吏に会い、共通の関心事である問題について幅広い意見交換を行った。

双方は、朝鮮民主主義人民共和国と米国との間の関係を全面的に改善させることができる新しい機会が造成されたことに対して、深く検討した。会談は真摯で、建設的かつ実務的な雰囲気の中で行われ、この過程を通じてお互いの関心事に対してよりよく理解するようになった。

朝鮮民主主義人民共和国と米国は歴史的な北南最高位級の出会いによって朝鮮半島の環境が変化したということを認めるとともに、アジア・太平洋地域の平和と安全を強化するのに有益であるよう、両国間の双務関係を根本的に改善する措置を取ることを決定した。これと関連して双方は、朝鮮半島の緊張状態を緩和させ、1953年の停戦協定を強固な平和保障体系に替え、朝鮮戦争を公式に終熄させるために4者会談など様々な方法があるということで、見解を共にした。

朝鮮民主主義人民共和国側と米国側は、関係を改善することが国家間の関係において自然な目標であり、関係改善が21世紀に両国の人民に共に利益になると同時に、朝鮮半島とアジア・太平洋地域の平和と安全も保障できるようになると認めるとともに、双務関係で新しい方向を取る意向がある、と宣言した。初の重大措置として双方は、如何なる政府も他方に対して敵対的な意思を持たないと宣言し、今後、過去の敵対感から抜け出した新しい関係を樹立するために、あらゆる努力を尽くす、という公約を確言した。

双方は、1993年6月11日付の米朝共同声明で指摘され、1994年10月21日付の基本合意文で再確認された原則に基づいて、不信を解消し相互信頼を成し遂げ、主要関心事を建設的に取り扱って行くことができる雰囲気を維持するために努力することに合意した。これと関連して双方は、両国間の関係が自主権に対する相互尊重と内政不干渉の原則に基づくべきであることを再確言しながら、双務的及び多務的空間を通じた外交的接触を正常的に維持することが有益である、ということに対し留意した。

双方は、互恵的な経済協調と交流を発展させるために協力することに合意した。双方は、両国人民に有益で、東北アジア全般での経済的協調を拡大するのに有利な環境を用意するのに寄与するはずの貿易及び商業可能性を探求するために、近日中に経済貿易専門家の相互訪問を実現する問題を討議した。双方は、ミサイル問題の解決が米朝関係の根本的な改善とアジア・太平洋地域での平和と安全に重要な寄与をするであるはずだということで、見解を共にした。

朝鮮民主主義人民共和国側は新しい関係構築のための、もう一つの努力として、ミサイル問題と関連した会談が続く間には、あらゆる長距離ミサイルを発射しない、ということに対し米国側に通報した。朝鮮民主主義人民共和国と米国は基本合意文に沿う自分たちの義務を完全に履行するための公約と努力を倍加することを確約しながら、このようにすることが、朝鮮半島の非核平和と安全を成し遂げるのに重要である、ということを堅く確言した。

このために双方は、基本合意文に沿う義務履行をより明確にすることで見解を共にした。これと関連して双方は、金昌里の地下施設への接近が米国の憂慮を解消するのに有益であった、ということに留意した。双方は、最近の何年間の共通の関心事である人道主義分野で協調事業が始まった、ということに留意した。

朝鮮民主主義人民共和国側は、米国が食糧及び医薬品支援分野で朝鮮民主主義人民共和国の人道主義的需要を充足させるために意義ある寄与をしたことに対し謝意を表した。米国側は、朝鮮民主主義人民共和国が朝鮮戦争時期に失踪した米軍兵士らの遺骨を発掘するために協力してくれたことに対して謝意を表したし、双方は、失踪者の行方を、可能なかぎり最大に調査、確認する事業を迅速に前進させるために努力することに合意した。

双方は、以上の問題とその他の人道主義問題を討議するための接触を続けることに合意した。双方は、2000年10月6日の共同声明で指摘された通り、テロに反対する国際的努力を支持・鼓舞することに合意した。趙明禄特使は歴史的な北南最高位級会談の結果をはじめ、最近の何カ月間の北南対話の状況に関して、米国側に通報した。

米国側は、現行の北南対話の継続的な前進と成果そして安保対話の強化を含んだ北南間の和解と協調を強化するための発起の実現のために、あらゆる適切な方法に協調する自らの確固たる公約を表明した。趙明禄特使は、クリントン大統領と米国人民が、訪問期間中に暖かく歓待してくれたことに対して謝意を表した。朝鮮民主主義人民共和国国防委員会金正日委員長にクリントン大統領の意思を直接伝達し、米国大統領の訪問を準備するために、マデレーン・オルブライト国務長官が近日中に、朝鮮民主主義人民共和国を訪問することで合意した。

2000年10月12日 

ワシントン

日朝平壌宣言 

平成14年9月17日

 小泉純一郎日本国総理大臣と金正日朝鮮民主主義人民共和国国防委員長は、2002年9月17日、平壌で出会い会談を行った。

 両首脳は、日朝間の不幸な過去を清算し、懸案事項を解決し、実りある政治、経済、文化的関係を樹立することが、双方の基本利益に合致するとともに、地域の平和と安定に大きく寄与するものとなるとの共通の認識を確認した。 

1.双方は、この宣言に示された精神及び基本原則に従い、国交正常化を早期に実現させるため、あらゆる努力を傾注することとし、そのために2002年10月中に日朝国交正常化交渉を再開することとした。

 双方は、相互の信頼関係に基づき、国交正常化の実現に至る過程においても、日朝間に存在する諸問題に誠意をもって取り組む強い決意を表明した。 

2.日本側は、過去の植民地支配によって、朝鮮の人々に多大の損害と苦痛を与えたという歴史の事実を謙虚に受け止め、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明した。

 双方は、日本側が朝鮮民主主義人民共和国側に対して、国交正常化の後、双方が適切と考える期間にわたり、無償資金協力、低金利の長期借款供与及び国際機関を通じた人道主義的支援等の経済協力を実施し、また、民間経済活動を支援する見地から国際協力銀行等による融資、信用供与等が実施されることが、この宣言の精神に合致するとの基本認識の下、国交正常化交渉において、経済協力の具体的な規模と内容を誠実に協議することとした。

 双方は、国交正常化を実現するにあたっては、1945年8月15日以前に生じた事由に基づく両国及びその国民のすべての財産及び請求権を相互に放棄するとの基本原則に従い、国交正常化交渉においてこれを具体的に協議することとした。

 双方は、在日朝鮮人の地位に関する問題及び文化財の問題については、国交正常化交渉において誠実に協議することとした。 

3.双方は、国際法を遵守し、互いの安全を脅かす行動をとらないことを確認した。また、日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題については、朝鮮民主主義人民共和国側は、日朝が不正常な関係にある中で生じたこのような遺憾な問題が今後再び生じることがないよう適切な措置をとることを確認した。 

4.双方は、北東アジア地域の平和と安定を維持、強化するため、互いに協力していくことを確認した。

 双方は、この地域の関係各国の間に、相互の信頼に基づく協力関係が構築されることの重要性を確認するとともに、この地域の関係国間の関係が正常化されるにつれ、地域の信頼醸成を図るための枠組みを整備していくことが重要であるとの認識を一にした。

 双方は、朝鮮半島の核問題の包括的な解決のため、関連するすべての国際的合意を遵守することを確認した。また、双方は、核問題及びミサイル問題を含む安全保障上の諸問題に関し、関係諸国間の対話を促進し、問題解決を図ることの必要性を確認した。

 朝鮮民主主義人民共和国側は、この宣言の精神に従い、ミサイル発射のモラトリアムを2003年以降も更に延長していく意向を表明した。 
双方は、安全保障にかかわる問題について協議を行っていくこととした。 

日本国総理大臣小泉 純一郎 朝鮮民主主義人民共和国国防委員会 委員長金 正日

2002年9月17日

平壌