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なぜ北朝鮮は崩壊しないのか?理解の鍵は「先軍思想」!

なぜ北朝鮮は崩壊しないのか?理解の鍵は「先軍思想」!

顔本上で友人からこのような質問を受けたことがある。今回はこの質問に「先軍思想」をキーワードに答えていく。

北朝鮮という国家が崩壊しないのはなぜだろう。資本主義社会の富貴栄華を存分に受けた日本人の目線からすればとても不思議に思える。国際社会からの多大な制裁を受けても不屈の精神で立ち上がり、社会主義建設への前進を止めないのはなぜなのだろう。

北朝鮮が崩壊しない理由は様々あるがこの記事では崩壊しない理由を「先軍思想」という概念に絞って解説していく。他の要因は別記事に改める。では記事建設を始めよう。

「先軍思想」とは何か?

「先軍思想」とは北朝鮮における思想の一種。1998年ごろから北朝鮮の中央政界で突如として存在感を示し始めた思想である。

「先軍」とは「軍事優先主義」という意味。北朝鮮の体制を維持する中で軍こそが一番の優先事項であるとした思想のことだ。

日本では核ミサイル開発が騒がれるが、その北朝鮮の活動を支える思想が「先軍思想」と言っても過言ではない。2004年には金正日の思想理論的総括であると主張されるようになった。これは最高指導者が認めたイデオロギーとして先軍思想は確固たる地位を保持したことを意味する。

2009年に北朝鮮は憲法を改正するが、ついにこの「先軍思想」を憲法に盛り込んだ。「先軍思想」が国家の正式な運営方針に加えられたのである。この意味は大きい。北朝鮮にとって「先軍政治」=「軍事優先」は日本の憲法9条のような国家としての方針を決める一大思想なのである。

「先軍思想」はなぜ生まれたのか?

では20世紀末になり「先軍思想」はなぜ突如として現れ、北朝鮮の中で中心的なイデオロギーになったのだろうか?

軍を優先するという考え方は何も北朝鮮の中で近年になって現れた特異なものではない。北朝鮮という国家の礎は日帝主義への抗日パルチザン運動である。この運動を行った朝鮮人民軍の役割は北朝鮮の中で長年喧伝されてきた。

このように北朝鮮にとって軍の重要性は言うまでもないが、その重要性が加速度的に上昇したのが1989年の東欧革命であった。この東欧革命は北朝鮮に非常な衝撃を与えたのである。

東欧革命とは大まかに言えば、共産党の一党支配体制に憤怒した市民が蜂起、体制転覆を成し遂げた一連の事象である。とりわけルーマニアでの出来事は北朝鮮を恐怖の戦慄に陥れた。

ルーマニアでは長らくチャウシェスク大統領による独裁政治が行われていたが、東欧革命の流れを受け、民衆が蜂起した。ここで重要なのがこの民衆に軍が同調したことである。本来なら国家体制を保持するはずの軍隊が体制崩壊に一役買ってしまったのである。

北朝鮮はこのルーマニアの事例を教訓に決して軍隊が体制に歯向かわないように務めている。これが「先軍政治」が生まれた背景である。その意志を端的に示しているのが2003年12月23日付の『労働新聞』の社説「思想と信念の銃を主力にして先軍時代を輝かせていこう」である。少し引用しよう。

…かつて社会主義を建設した多くの国では革命運動で銃の政治思想的威力を強化知ることに相応の注意を払うことができず、さらに社会主義背信者らが起こした非思想化・非政治化の風に巻き込まれ、軍隊を思想精神的に武装解除させた…

独特の北朝鮮訛りは理解が難しいが、ざっくり言えば軍隊が民主化蜂起した大衆に協力してしまったことを批判しているのである。軍隊は社会主義の思想を堅持しつつ、体制維持にひたすら貢献しなければいけないという主張である。

ちなみに北朝鮮の軍の名前は「朝鮮人民軍」であるが、これは朝鮮労働党の軍隊である。言うなれば自民党が自民党軍を持っているようなものである。ここをはっきりさせないと構造的理解ができないので注意されたい。

「先軍政治」によって国家が軍を最優先に考えることで軍人たちは自らが国家の中心であるとの気概に溢れることになる。予算配分も軍隊が優先され、軍人たちの待遇もよいものになるだろう。国家が軍へある意味「媚びる」ことによって軍隊が体制に歯向かわない構造を作り出しているのだ。金正恩体制では軍人に対して頻繁にポストをいじったり勲章を与えていたりする。これも軍が国家の維持のために大切で忠誠心を持たせるための一連の行動であるということができる。

このように北朝鮮は歴史を教訓としながら時代に応じてその思想や体制を変革させてきた。核やミサイル開発を支える「先軍思想」を知ればより北朝鮮理解は深まるであろう。