アメリカの議会と法律の作り方について詳しく解説①

アメリカの議会と法律の作り方について詳しく解説①

この記事ではアメリカの議会の役割とその議会が法律をどのように作っているのかについて解説しています。

日本から見るとアメリカの政治は大統領が支配しているように見えます。しかし、その実態は違います。アメリカの政治は議会が支配しているのです。

一体どういうことなのか。一緒に勉強していきましょう。

「第一の機関」としての連邦議会

連邦議会の位置付け

アメリカの連邦議会の存在は憲法第1条に規定されています。連邦政府の権限は大半が連邦議会の権限として明記されています。徴税や州際通商規制など国家の意思決定の機関としての役割の多くが連邦議会に与えられています。

連邦議会は変換型議会と呼ばれる議会です。変換型議会とは内部で実質的に物事を決定する議会のことです。そのため、連邦議会の中には議会や議員を支えるスタッフや組織(議会調査局や議会予算局など)が充実しています。

議会に与えられた日本とアメリカではその議会が持つ機能はまったく異なります。両国の議会の役割を少し比較してみましょう。

日本は法案の大多数が内閣提出で、その法案のままでの法案通過率が高いです。アメリカはそもそも内閣提出法案がなく、法案は議員によって提出されます。それらの法案のうち、審議過程で修正が入らないものはほとんどありません 。法案をたたき台に与野党の政策論議が行われます。

実際に議会で何を話しているのかが法案の中身に関わってきます。アメリカでは本会議よりも委員会が法案の内容に大きな影響を及ぼしていますが、議会の中で立法過程が終了するわけではありません。

立法過程の基本的特徴

連邦議会は上院と議会からなります。上院の方が権限が大きく(条約の批准や人事承認などの権利が与えられている)、審議も柔軟なものになっています。

議会に対して大統領が発動できる拒否権は上院と下院の3分の2で拒否権を乗り越えることができるため、大統領よりも議会の方が大きな権力を持っていると考えられています。

連邦議会では議員1名で法案提出が可能で、2年間の議会期(奇数年の1月〜)中に成立しなければ廃案になります。提出される法案のうち、成立するのは数%です。

審議過程のあらまし

委員会中心の審議

提出された法案は委員会に付託され、審議する場合は公聴会などを経て修正され(小委員会での審議も)通過されるかどうかが決定されます。

通過後の法案は上院では多数党院内総務、下院では議事運営委員会にて本会議での審議の可否とその日程が決定されます。

アメリカの政党はその政党規律が弱く、政党投はほとんど行われません。それどころか票取引さえ行われます。本会議に提出された法案は本会議では修正なく成立するのが普通です。

委員会を通過した法案はそのほとんどが可決されます。委員会で審議中に本会議で通過するように修正され、議員の票固めも行われるからです。

委員会で審議されたものをその委員会に所属しない議員が横槍を入れることは暗黙のルールとして否定されています。

各議員の興味分野が一致しないため、票取引も行われます。
法案に対して、ギリギリ過半数の場合はそれほどありません。満場一致の場合も多くあります。

本会議には様々な委員会を突破した法案がたくさん出てきます。上院と下院で修正された法案のバージョンが異なることもあるので、両院会議で調整されることもあります。議会ですべての手続きが行われたのちに大統領のもとに法案が提出されます。

アメリカは法案に対する政党規律が非常に弱いです。そのため法案ごとに議員に働きかけて、多数派を形成しないといけません。これは日本とは対照的です。

民主党の議員が100%支持し、共和党議員が全然支持しないような法案はほとんどありません。政党投票が認められる法案は近年上昇傾向にはありますが、日本の政党対立とはまた別次元の話です。

超多数派ルールの意義

アメリカの大統領は議会に対して拒否権を持っています。拒否権とは議会を通過し、大統領のもとにやってきた法案を大統領自身が拒否し、成立させないようにすることができる権利のことです。

この大統領拒否権は法案のみに発動可能です。議会としては拒否権を発動させないようにするために大統領を味方につけることで一院の3分の1+1票で法案を止めることができます。

上院においてはフィリバスター=議事妨害がしばしば行われます。審議を行わせないために延々と自分の主張を続ける光景がしばしばみられます。

このゲリマンダーをやめさせ、審議打ち切り動議を通すには上院の60票が必要です。

これらのことから連邦議会は単なる多数決主義では動かないことがわかります。このシステムでは多数派からの妥協を引き出しやすい反面、折り合いがつかないと膠着状態になることがしばしばあります。

法案内容を決定する上で、大統領拒否権を乗り越えられる数の議員数を確保する必要があります。つまり、大統領が賛成する or 3分の2以上の賛成を確保することが求められています。

アメリカの議会には少数派が多数派を妨害するための選択肢がたくさんあります。政党の分極化に加えて、現在の法律の作りづらさはその連邦議会のシステムにあるとも思われています。

自律的な議員たちによる政策形成

議員の行動様式

アメリカ連邦議会の議員は政党からは自律的な一方、再選されるには選挙区や資金提供者などからの支持が必要です。

そもそもなぜアメリカの連邦議会の議員はこんなに自由にできるのかでしょうか?

それは党の公認候補になる必要はなく、予備選挙に勝てば問題はないからこそ、当選後も党の指導部に従う必要はないからです。

政党としても議員には自らがやりたい政策があるはずだと議員の自律性を許容しています。

再選を目指す議員は何をするか?

多くの議員が自分が実現したい政策を実現するためなどの理由から再選を目指します。実際に連邦議会の選挙では現職議員の再選率が非常に高くなっています。

ここでは再選を目指す議員は何をするのかについて解説していきたいと思います。

メイヒューによれば再選を目指す議員は、立場表明と功績の主張、宣伝をすると言われました。

この中でも特に功績の主張を積極的に行うことがわかっています。自分がこれまでに何をしてきたのかを有権者にアピールするのです。これは現職の議員にしかできないアピールで、再選を目指す議員としては活用しない手はありません。

しかし、議員は議会の中で動きます。組織の中での成果を自分一人だけの実績だと言うには少し無理があります。

その中で有権者に対してアピールするためには議会を活用して、選挙区に利益誘導を行なったことや委員会システムを活用して功績を大きく見せることが常套手段となっています。

委員会システムは基本的に10人程度の議員が法案の審議を担当します。そのため議員は必ずどこかの委員会で活躍していることになり、実質的に個人で影響を与えることができるため、功績を主張しやすいのです。