アメリカの議会と法律の作り方について詳しく解説②

アメリカの議会と法律の作り方について詳しく解説②

前回の記事ではアメリカの議会が法律をいかに作っているのか?について解説しました。今回の記事ではアメリカでの法律を作る過程にどのように政党が絡んできているのかについて解説していきます。

議会内政党の構造と意義

委員会審議は多数の法案を効率よく裁くために必要です。本会議では検討する時間的余裕がないため委員会が集中的に専門的に審議することになっています。

本会議の採決時の規律がない議会内政党にはどんな意味があるのか?

議会内政党の構造

アメリカの政治では日本に比べて、政党の役割が小さいことは確かですが、大切でない訳ではありません。少なくとも委員会の段階で非常に大きな影響力を持っていることがわかっています。

今の連邦議会ではイデオロギーによる分極化が進んでいますが、審議過程にはどのような影響を及ぼしているのでしょうか。

議会内政党は議会内の役職(院内総務や院内幹事など)を選出し、委員会人事を一手に握っています。

委員会には先任者優先制が取られ、多数党の所属議員で最長在任者が委員長になる原則があります。

委員会の配属は所属政党の指導部が行います。議員にとってどの委員会に入れるかは党指導部次第です。議員は再選されれば加入していた委員会に所属し続けることができます。これは再選を目指すインセンティブになっています。政党には議員の序列が存在します。その序列は連続しての在任期間によって決定されます。連続していることが大きな判断基準です。委員会の委員長は党内序列が高いことの象徴です。

議会内政党の存在意義

個々の議員にはできない仕方で再選可能性を高める一種の協同組合のようになっています。

立法面での貢献

手続きカルテルとしての政党の意味が大きくなっています。多数党は所属議員の多くが通過を望まない法案を葬る形でのアジェンダ権力を発揮します。

また政党ブランドを利用して、「大きな」問題について立法を推進します。

委員会は本会議の代理としての役割が求められています。そのため委員会は本会議の選好の分布と等しい分布割合でないといけないと思われます。委員会によって本会議にあがってくる法案が変わってくるからです。

政党は個々の議員の行動をコントロールする力はありませんが、個々の法案の議題設定について非常に大きな影響力があります。なぜなら政党は人事面で大きな影響を持っているからです。

選挙面での貢献(議席数最大化)

議会内政党は議員の再選を後押しするような協力(予算配分や委員会人事)を行います。それを裏付けるように各院内には政党ごとの選挙対策委員会が設置されており、所属議員や新人候補に選挙資金などをサポートしています。

政党には大きな政策について立法を推進したり、手続きカルテルとしての政党などの役割もあります。

議員を再選を後押しする協力や選挙対策委員会を設定するなど現職の再選の後押しを積極的に行なっています。

所属議員や新人候補に選挙資金などをサポートし議員数を最大化することが目的です。多数党であるかどうかは政党が持てる権力を大きく左右させるからです。

功績作り機関としての政党の役割もあります。議員に功績づくりの手伝いをすることで、個々の議員にはできない形で再選可能性を高めることができます。
議会内の審議に大きな影響を及ぼすのが政党です。そのため政党に属する人間の思想的な立ち位置が大切になります。

分極化とその要因

連邦議会は二大政党間のイデオロギー距離の拡大と各党内の凝集性の増大によって分極化が進んでいます。

有権者のイデオロギーと政党支持が合致と多数の無風選挙区が存在が全国の有権者の多くが中道であっても選出された議員は分極化する傾向があります。

多くの選挙区で、選出された議員が選挙区の中位投票者よりイデオロギー的に極端に行動することがわかっています。

これは①候補者にとって予備選挙の重要性が相対的に増大しているために予備選挙の投票者に合わせて行動するようになっているから、②イデオロギーに基づいて連合を組み、議員を支援しその活動を監視する利益団体があることが理由として考えられています。

分極化の帰結

連邦議会における二大政党は共和党と民主党の分極化が進んでいます。投票行動から推測しても、民主党と共和党のイデオロギー的に重なる部分が少なくなっており、各政党内でのイデオロギー的な凝集化が進んでいることがわかっています。

政党の中で分極化が進み、それに合わせて有権者が分極化したことがわかっています。有権者のイデオロギーは分極化が進んでおらず、正規分布である一方で政党は分極化が進んでいます。

投票者の思想的立ち位置よりも実際の議員のイデオロギーはより急進化しています。予備選挙で投票する人間は支持者の中でも思想的に極端な人たちばかりです。

予備選挙で投票する有権者の中位投票者はより思想的に極端な人たちの思想を反映されることになります。この結果、有権者全体のイデオロギーとはかけ離れた人間が議員として職に就くことになります。予備選挙の当初の意図とはまったく異なるものになりました。

立法過程における二大政党間の関係悪化

かつてはイデオロギーに重なり合い、選挙の上でも対立は弱いものでした。しかし、分極化(特に共和党の保守化)したことで両党の対立は激しくなります。

党内の凝集化が進むことで政党指導部が強化され、両党の対立が拡大する要因になりました。

立法生産性の低下

各党が独自の政策方針を推進し、責任政党化することはむしろ望ましいことだとも考えられています。しかし、議事の膠着状態が多く発生するという副作用もあると思われます。

二大政党が分極化しているだけでなく拮抗状態にあることも対立状態を助長していると言えるでしょう。

議会内政党は中途半端な凝集化状態にあり、対立政党の方針には一丸となって反対する一方で、自党の政策には必ずしも結集できません。

アジェンダ権力を持つ多数党が通しない法案を少数党がブロックする状況も出来上がっています。

自分の所属している政党の指導部にどこまで支配されるのか

政党により多くのことを「お任せ」するためにより思想的に急進化することになりました。

指導部は中道派の人間が構成しますが、党全体は考え方が似通ってきているため、政党内の結束力は強くなっています。

政党は特定の議員に行動を強制することはできません。採決に際して党をあげて一つの立場をすることもできません。

少数派にとってはとんでもない法案ばかりが凝集化した議会では提出されるます。しかし、そんな法案しか残っていません。結果的に議事進行の妨害が多く行われることになります。

多数党の指導部が主導して委員会をすっ飛ばして、いきなり審議に移る場合もあります。分極化が進んで重要な法律がなかなか成立しなくなっています。一致団結して、法案成立に突き進むことがないからです。分極化は構造的な問題なので、一気に解決することはないだろうと考えられています。