アメリカの官僚機構ってどうなっているの?

アメリカの官僚機構ってどうなっているの?

アメリカの執行府は行政機関+独立行政機関+大統領府からなります。ここではその中でも行政機関=官僚機構を取り上げたいと思います。

「第四の機関」としての行政機構

権力分立原理と行政の位置付け

合衆国憲法における三権(立法、執行、司法)と規定外の行政が存在します。

コモンロー上の「法の支配」は裁量的解釈を伴う法執行は通常裁判所の領分です。

政策の専門家や政府の役割の拡大によって三権では対処困難になり、行政機関への委任へと移っていきます。行政機関では三権すべての行使ができます。

行政機関と大統領府は政権内における位置付けが全然異なります。アメリカでは歴史的に官僚機構の存在が想定されていませんでした。

執行権は大統領以外には与えられていません。そのため日本とはだいぶ様子が異なります。

アメリカは行政権ではなく、執行権が存在します。内閣は政権ごとに大きく扱いが変わります。日本では内閣は行政権を保持しますが、執行権は保持しません。

日本では立法権と司法権以外はすべて内閣が所管すると考えられていますが、アメリカではそもそも内閣の存在が想定されていません。

行政機関の構造

行政機関は猟官制からメリットシステムへと転換が始まり、ニューディールにかけて浸透していきました。

政治任用者とキャリア官僚の立場の違いが存在しつつ、官庁と大統領との関係に考慮する必要があります。

行政機関は大統領(人事権)、連邦議会(立法・予算)、司法(判決)の三権から統制を受けます。

各省の長官に大統領が助言を求められる以外は定められていません。法の執行とは議会が作った法律の内容を淡々と実行することを言います。執行機関はそのために作られた機関です。

議会が立法し、その内容を執行するのが執行機関です。それに不備不満があれば、司法がチェックを入れることになります。これが旧来の三権分立の考え方です。

議会によって大雑把に規定を作り、執行機関による裁量を認めるようになりました。この結果、執行機関が独自解釈を行い、独自規則を作るようになってしまいます。行政機関の裁量が大きくなりすぎてしまいました。

行政機関の裁量拡大の背景には、政策の専門化、政府の役割の拡大がありました。法の執行だけではなく、独自の裁量を持って、解釈を行い、総合的な法律の執行を行うように行政機関の役割が変化します。

独立機関も行政委員会も大統領が人事権を握ります。官僚機構は君主の実行部隊です。

大統領府と「機関としての大統領」

大統領府

大統領は「法が適切に執行されるようにはからう」(合衆国憲法第2編3項)ため仕事量と専門性の壁が存在します。

1939年には行政組織法で大統領府が設置されました。「機関としての大統領」の中核に大統領府がおかれました。

アメリカの大統領は政策形成に大きな権力を持っていません。そのため法の執行に当たる行政機関は大統領からの指令を必ずしも受けるわけではないのです。大統領が行政機関のトップでなく、行政機関でさえ十分にコントロールできるわけではありません。行政機関をコントロールできない代わりに用意されたのが大統領府です。

ある程度の組織だった組織がないと大統領は自分の任務を果たすことができないと考えられるようになりました。

大統領府の人事は一部を除いて上院の承認を必要としません。大統領府はホワイトハウスの中に事務局を持ちます。大統領府のスタッフは毎日大統領と顔を合わせ、大統領府補佐官の重要性は上がっていきます。

大統領が果たす役割は大統領だけで果たしているわけではありません。大統領府と大統領個人が合わさって、大統領としての役職の仕事を果たすようになっています。その結果、機関としての大統領が現れるようになりました。

大統領による人事配置

大統領は大統領府と行政機構との間でどう人事を行うのでしょうか。補佐官と閣僚のライバル関係の間で大統領は苦悩する場面もあります。

政権中枢が「マフィア化する」場面もあり、それがもたらす弊害も取り上げられています。

大統領としては行政府と大統領府のうまい使い分けが必要になります。そのために必要になるのが人事です。どうせ自分で政策決定をできないのだから人事をうまくやるしかありません。

大統領府人事を上手く行っても、行政機関が実際の執行に当たるので、行政機関の人事もないがしろにはできません。

自分に近しい人を行政機関に送り込んでも、行政機関に取り込まれてしまうことが多く、行政機関の人事は非常に難しいものです。

国家安全保障会議と国防長官は潜在的にライバル関係にあります。業務内容がかぶるからです。大統領は大統領府には腹心を置いて、信頼できる専門家を行政機関に送り込む傾向にあると考えられています。

しかし、腹心を周りに配置することで政権内が仲良しクラブができてしまい「マフィア化」する可能性が指摘されています。この結末として現れたのがイラク戦争です。

現在のトランプ政権の問題は空きポストがめちゃくちゃ多いことです。人事こそが大統領が政策決定に大きな影響を及ぼすことができるためには一番重要です。しかし、トランプ政権ではどんどん人がやめている上に、上院に拒否されたケースも多くなっています。
トランプ自身が行政自体を潰そうとしていることと上院に承認されるような人を見つけられずにいることの二つが可能性として考えられています。国防省のスカスカぶりはひどいものです。

行政機構のコントロール

本人=代理人関係としてみた行政機構の統制

独自の政策選好を持つ行政機関と複数の「本人」(=行政機関)が存在します。

議会、大統領、行政機関の選好(と現状)の関係と行政機関の裁量

議会と大統領による統制とその限界

連邦議会は公聴会での証言や立法時の裁量統制によって行政機構を統制することが可能です。

大統領は人事権の活用で行政機関をコントロールしようとしますが、その限界もあります。

行政機関は行政機関で政策を実現したいし、これは大統領府も同じことを考えています。

そこで大統領の代理人としての議会を想定する本人代理人モデルを考えます。議会と大統領の二つを想定して、その意向がずれているとことを利用して、行政機関は行動するだろうと考えるのです。

行政機関は大統領もしくは議会のいずれかと方針が一致すれば一方に対して、圧力をかけることができて政策決定を好みの方向にずらすことができます。

行政機関がどれほど行動できるかどうかは法案の子細によります。行政機関のコントロールをするためには法案が大雑把か子細に業務内容を決定するかどうかで決まります。

大統領は人事だけでは行政機関をコントロールすることができません。なぜなら脅しがきかないからです。キャリアの公務員はクビにすることができないから、ポスト移動をさせる脅ししかないないのです。

その脅しによって大統領の意向に従う組織にはなるが、組織としての能力が落ちることも間違いないのです。