アメリカ政治は政治インフラによって動かされている!

アメリカ政治は政治インフラによって動かされている!

政治的インフラストラクチャーとは何を指すか

政治的インフラストラクチャーとは政党政治の表舞台にヒト、カネ、情報を供給する「縁の下の力持ち」の団体のことです。

財団やマスメディア、シンクタンク、法曹団体、政府監視団体、メディア監視団体などが政治的インフラストラクチャーに当たります。

広義の利益団体が多いもののその活動には顕著な特徴があり、アメリカ政治の構造の一部になっています。

政治インフラと同じような役割を持っているのが利益団体です。しかし、これらの役割はまったく異なります。

利益団体は、自分の利益となる特定の政策を実現するように政府に訴えかけます。一方の政治インフラは政党政治システムをバックアップする役割を持っています。

近年では、政治インフラは政党性を帯びており、インフラ同士が協力して、政党の二極化を促進しています。20世紀まではリベラルが優勢でしたが、現在の政党性は拮抗関係にあります。

シンクタンク

ここからは具体的な政治インフラについて確認していきます。以下でご紹介するのは政治インフラの2大巨頭=シンクタンクとマスコミです。まずはシンクタンクについてみていきましょう。

シンクタンクの登場と発展

アメリカ政治において、シンクタンクは20世紀初頭に登場しました。登場の背景には革新主義の風潮、実学重視の流れ、産官学による「研究促進体制」があり、政府とは独立した組織が政策提言を行うことが求められました。

シンクタンクはアメリカでは独自の政策や有力な研究情報などを以ってして、政策決定に大きな影響力を持っています。アメリカは圧倒的に多くのシンクタンクを抱えています。

シンクタンクが政治的影響力を発揮しやすい環境にあり、富裕層による寄付によって活動資金が潤沢です。シンクタンク自体が財団である場合もあります。

役に立つ政策案や研究上の発見などを持っているとシンクタンクは政治的影響を発揮できるようになります。なぜならばアメリカ政府の開放性が高く、議員の自律性が高いからです。

シンクタンクは第二次世界大戦後のリベラル優位の下で影響力を拡大しました。シンクタンク自身も源流はリベラルだったため、要請された政策との親和性は高いものでした。官民の人材移動としての装置の機能も果たしました。シンクタンクは政府に人材を供給する供給源でもあり、官庁の幹部クラスの天下り先でもあったのです。特に高位官僚は政治任用なので、政権交代によってクビが切られる人間が多く、彼らはシンクタンクに再就職先を求める傾向にありました。

これは政府にとってもシンクタンクにとってもウィンウィンな部分があります。20世紀半ばのアメリカでは政策エリートでは政府とシンクタンク間で人材移動がありました。これを形容して「回転ドア」と呼びます。

60年代までのシンクタンクは確かにリベラル寄りでしたが、自分たちのことを「リベラル」とは言いませんでした。あくまで中立的に学術的分析を行う姿勢を貫いていました。

しかし、1960年代には内政・外交の両面でリベラルの失墜が起こります。オイルショックなどの経済問題や人種問題などの社会問題などでリベラル的な政策の限界が明らかになったからです。これに呼応するように、共和党に保守政治家が結集、保守派のシンクタンクが生まれ始めました。

シンクタンクの党派的系列化(1970年代〜)

1970年代から各政策領域で保守派の巻き返しが始まりました。ヘリティジ財団やケイトー研究所、AEIなどが設立されます。

保守派の政策専門家を囲い込み、育成、政策案を供給し始めます。レーガンやH.W.ブッシュ政権との緊密な関係を築きます。その一方でシンクタンクの調査・研究に対する信頼は低下しました。

その後、リベラルからの巻き返しが起こります。保守派に対抗して、リベラルを旗印にシンクタンクを作る必要性も生まれます。そのため対抗組織を作るために民主党のエスタブリッシュメントが意識的にシンクタンクを設立しました。アメリカ進歩センターなどが設立されます。これらの機関は当初から民主党のサポートを意識していました。

シンクタンクは総合から専門まで様々なシンクタンクがあります。第二次世界大戦後はリベラル優位であったため、シンクタンクへの発注もリベラルよりの政策が中心でした。

80年代以降、保守派の政権が続き、大統領と直接政策を作る保守派のシンクタンクが勢いを持ちました。シンクタンクから多くの人材が政府に流入する時期でもありました。

60年代までは有力なシンクタンクは党派性を出さず、学術性の高さを売りにしていました。

70年代以降はむしろ保守側から学術の世界におけるリベラルへの対抗を鮮明にするようになります。

かつてのシンクタンクは学術性を意識していましたが、現在では大手の有力シンクタンクが民主と保守派に分かれ、党派的な目的を持って活動するようになりました。

中立的な学術研究組織としてのシンクタンクの地位は揺らいでいます。党派性を出すことによって学術的な信頼性は低下しているからです。これによって社会全体に対するシンクタンクの信頼性は下がっていますが、リベラルはリベラルシンクタンクと結びつき、保守は保守シンクタンクと結びつき、結果的に両者の間での信頼性は上昇しています。

マスメディア

ここではマスメディアについてご紹介します。政治インフラとしてのマスメディアはどのような役割を果たしているのでしょうか。

マスメディアは政治の世界では政治の情報を有権者に伝える役割と政治家を監視する役割を持っています。

2013年の調査によれば、アメリカ人の主なニュース情報源はテレビが55%、インターネットが21%、新聞等出版物が9%、ラジオが6%となっています。

アメリカのマスメディアと党派・イデオロギーの関係

19世紀までは、アメリカのほとんどの新聞に明らかな党派性があり、新聞が政党組織の一部となっていました。

20世紀に入ると「客観報道」の方針が採られ、テレビ・ラジオは党派性を制約されました。公共物としての電波メディアが意識されるようになりました。

政党からの金銭的支援と購読料によってマスメディアは成り立っていました。かつてはどんなに小さな町でも二つの新聞が存在し、有力な政治家が編集しているパターンが多かったです。

マスメディアはある程度広告収入でやっていけるとなれば党派性を出さずに報道した方が読者層の幅が広がり、経営面では有利になります。

この結果、一般の記事は党派性を出さずに社説だけで党派性を出していくことになります。ラジオやテレビは特定の政党に与しないように求められていた。

しかし、マスメディアの性格上、現在でも多くのジャーナリストはリベラル寄りの考え方を持っています。

20世紀の前半から半ばについてはプリントメディアにしても他のメディアでも党派性は確認されませんでした。しかし、ジャーナリストはその多くがリベラルだと考えられてきており、この理由は社会がリベラルだったから、インテリだったから、ジャーナリズムの特性上の理由が考えられます。

1970年代以降の変化

リベラルで客観報道を是とするマスメディアのあり方が変化したのが1970年代でした。大統領への監視の目を強め、大統領に対するメディアの敵対報道が増加するようになります。

70年代以降、政治とメディアの付き合い方は大きく変わることになります。いわゆる敵対報道が登場したからです。反戦運動やウォーターゲート事件などに対する報道がその例です。

もともとジャーナリズムは政府に対して批判的なものですが、それがより先鋭化しました。あまりに敵対にしすぎると政治は何をやっても無駄であるという印象を視聴者や読者に印象付けてしまうことになるので、バランスをとることが必要です。

イデオロギー性が顕在化したことと保守メディア・コンプレックスが登場しました。

消費者の党派性と対応するように新聞などに保守派メディアが登場したのです。

党派性の中でマスメディアが位置付けられるようになりました。特定党派と直接つながるマスメディアが日本には存在しませんが、アメリカのマスメディアも明らかな党派性を持っているわけではありません。

マスメディアの党派性が現代になって顕在化してきました。ワシントンタイムズがワシントンポストに対抗して、保守派のメディアとして登場します。テレビではフォックスニュースチャンネル(保守派)が登場します。ケーブルテレビはチャンネルを作ろうと思えばいくらでも作ることができます。そうしてCNN(ニュース専門チャンネル)が登場しました。

マスメディアは全体的にリベラルでスタートし、保守派が巻き返し、さらにリベラルが巻き返す構図です。これはアメリカの政治的インフラに通底する流れです。

CNNへは保守からの批判が激しくなります。湾岸戦争に対して非常に批判的な報道を行なっていたからです。その一方でフォックスニュースはすごいクリントン批判が展開された。

現在でも保守派の方が報道への信頼性は低いままです。保守派とリベラルではマスメディアへの信頼性がまったく異なります。しかし、保守派が大好きなFoxはあまり評判がよろしくなく、事実に基づいていないのではないかとの噂もあります。

マスメディアで保守が劣勢であることは確かです。保守が信頼しているメディアは少なく、リベラルは信頼できるメディアの多様性があるとのデータが出ているからです。リベラルは地上メディアも信頼しています。

保守派は一部のメディアに集中的に支持していることがわかります。

リベラルの報道が中立な立場に立っていないことを主張するための監視団体が存在する一方で、メディア監視団体の監視団体も設立されるなどいたちごっこの状況です。

紙メディアの衰退によってオンラインへの移行が進んでいます。ジャーナリストをどこが雇っているのか?7割くらいが紙媒体だったのに現在では4割で、デジタルメディアが伸長しています。

おわりに 政治インフラと二大政党の分極化

1970年代まではリベラルが主流でしたが、70年代以降保守勢力が参入し、世紀末行こうリベラルが対抗するという図式が政治インフラと二大政党制に共通しています。

分野ごとに長い時間と大きなコストをかけて形成され、両党派で拮抗状況にあり短期的には揺るがないと考えられています。

財団や大学、マスメディア、シンクタンクが政治インフラとして大きな存在感を持っています。もともとリベラルが主流であったことに加えて、保守派が対抗。現在では対立は少し落ち着いています。