アメリカ大統領は世界最強の権力者?

アメリカ大統領は世界最強の権力者?

この記事ではアメリカの大統領制度について詳しく解説しています。現在のアメリカの大統領はドナルド・トランプ。彼は第45代目のアメリカ大統領です。アメリカの大統領はアメリカという超大国のリーダーであることから世界最強の権力者と目されることもあります。しかし、その実態は世界最強の権力者とは言い難い部分も存在しています。一体どういうことなのか?一緒に勉強していきましょう。

アメリカの大統領はそれぞれが個性を持ち様々に行動します。政治学的に彼らを分析することは非常に難しいことです。

政治学であるならば、ある程度一般的な大統領像を描きたいものですが、いずれもキャラ立ちする人ばかりなので一般化することは難しいです。

大統領の権力資源

憲法上の権限と政党との関係

議院内閣制における首相や他国の大統領と比べた時のアメリカ大統領はどのような特徴を持っているのでしょうか。

「古い」アメリカの大統領制では曖昧な「執行権」と限定的な権限だけが与えられていました。

大統領は所属政党の有力指導者にしか過ぎないという側面もありました。

アメリカの大統領は45代まで誕生しています。この45という数字は分析する上ですごく微妙です。その上、大統領の位置付けは歴史的に変化してきたので、そのことも分析を難しくさせています。

大統領の形が変わったピポットはフランクリン=ローズヴェルトでした。彼以降の大統領を現代型の大統領と言います。

現代型の大統領(フランクリン=ローズヴェルト以降の大統領)は14人しか存在しない訳で、分析がより一層難しくなっています。

似たような状況に置かれた大統領はいずれも似た行動をとると言われていて、21世紀に入ってから大統領研究は盛んになってきました。

アメリカの中における一番の権力を持つ機関は間違いなく議会です。しかし、個人としては大統領もアメリカの国力を背景に大きな権限を持っています。

議会と大統領の比較の中で権力の大きさを検討しないといけません。しかし、比較政治学的には他の国の執行者としては権力的には弱いと考えられています。

大統領と議院内閣制の首相を比較すれば、首相の方が与党からのサポートがあるがゆえに権限が強いです。政党との関係や憲法上の規定によって指導者の権力は決定されます。

アメリカの大統領には具体的な権限が与えられていません。「執政権」は曖昧で抽象的な言葉です。どこからどこまでが執政権として認められているのかは論争の種です。総合的に大きな権限が与えられているとは考えられていません。

アメリカから大統領制が他の国に輸出されていきました。他国においては、大統領制輸入時に大きな権限やアメリカにはない権限を付与されました。そのためアメリカの大統領が純粋な意味での大統領制を守り続けています。

議院内閣制の首相は強い権限を持ちます。多数党の支持を得ているからです。その一方で大統領は議会の多数党の支持を得ているとは限りません。

アメリカ大統領は所属政党の有力指導者にしかすぎません。ただ、所属政党に頼んで、自分の通したい法案を議会に提出することは可能です。しかし、 その法案は議会の中でどんどん修正されます。

そのため、アメリカの大統領を世界最高の権力者と言うにはあまりに権力基盤が脆弱すぎです。

大統領の政治的位置付け

19世紀までの大統領は「第一の機関」にる議会に対する「事務主任」との立場で、それほどの権限は与えられていませんでした。

その一方で外交は大統領の専管事項であり、国家元首について軍の最高司令官でもあります。このようにアメリカには「二つの大統領制」があると言われてきました。

大統領の権限は建国当初、強くなると困るので、強くならないように制度設計したと考えられています。

アメリカ憲法起草時は君主制の復活を恐れて、強力なリーダーが出てくることを嫌がります。そのため合衆国憲法では「執行権」を監督する人間の権力抑制を狙います。

討議の結果、出てきたのが現在の合衆国憲法2条1項の曖昧な文章でした。実際はより具体的に権限を定めたかったのですが、時間切れで詰め切ることができませんでした。

そこでワシントン初代大統領によって先例を作り、「執行権」の権限の射程がどこまでなのかを定めようとしました。ワシントンに丸投げしたのです。

19世紀までの大統領はそこまで政策形成に主導的な役割を担って来ませんでした。大統領は行政権の長としての役割が大きかったのです。

そのため当時の大統領は議会が決定した法案をそのまま粛々と執行するための存在でした。知名度が低いのも納得です。

ただし慣例的に戦争時は指揮官として軍を先導し、権限を強く持っています。このように外交関連は大統領の専管事項として扱われています。

アメリカ大統領は外交と内政では相当に位置付けが異なるのです。そのため、二人の大統領がいるのではないか=「二つの大統領制」が提唱されました。

日本人の大統領像は強い権限を持つ指導者というイメージです。しかし、その実情は日本人がアメリカ大統領が強い権限を持つ分野での行動=外交を日々観察しているからだと考えられます。外交におけるアメリカ大統領ばかり見ているとその実態を見誤る可能性があります。

大統領は内政で実績が生まれない場合、外交を実績稼ぎに使う場面があります。クリントン政権のアイルランド調停はその例です。

初代:ジョージ=ワシントンから引き継がれ、大統領ポストは圧倒的な「権威」を持つものの実際の権限執行能力は低く抑えられていました。しかし、 20世紀入ってから大統領主導の政策が形成されるようになってきました。

変化のきっかけとなったのが世界恐慌での景気低迷、フランクリン=ルーズヴェルトによる政策です。憲法上の権限に変更はありませんでしたが、大統領が行うことが変わってきました。

現代型大統領の登場とその理由

アメリカの大国化と行政国家化によって大統領は管轄領域が拡大します。また選挙における政党への依存度が低下したことで、大統領選挙が他の選挙にも影響を与えるようになりました。

管轄領域が拡大しました。外交面(米西戦争、WWI etc→アメリカの大国化、外交政策のボリュームアップ、内政面にも外交的処理の増加)に加えて、アメリカの行政国家化(種々の政策領域における行政機関化が進むことで、行政機関の人事権を持っている大統領の意味合いが変化)によって大統領の業務範囲が拡大しました。

大統領と政策形成

大統領の政策過程への影響力

「説得する力」もなく「世話役」と言われるほど政策形成過程への大統領の権力は小さいものです。

その一方で大統領は最強の議題設定役としての地位にあります。

政策的影響力行使の手法

拒否権を乗り越えようとする議会との攻防を通じて、大統領の存在感を高めようとしたり、世論へのアピールを通じて、人々に政策優先順位を変更させたり、行政命令や署名時命令などの行政裁量の活用によって、政策的影響力を行使することがあります。

19世紀までの大統領は政党におんぶにだっこでした。なぜなら大統領は自ら選挙戦を戦うことが慣習的に認められていなかったからです。

というのも自ら権力の座を求めることは共和主義の原則に悖ると考えられていました。そもそも選挙のために候補が全国を回ることが不可能であるため、政党の地方組織の協力が必要だったのです。

20世紀に入ると交通手段の高度化、テレビ、ラジオの普及によって大統領候補個人による選挙戦が可能になりました。こうして大統領と所属政党の関係に変化し、大統領(候補)人事権がより強化されました。

結果的にアメリカ大統領は所属政党の他の選挙での候補者にも大きな影響力を与えるようになりました。

とにかく大統領は政策形成のための権限を持っていません。大統領には強制力を持って自らの意思を決定する能力がありません。「説得する力」しか持っていないと表現されてきました。何かアクションを起こさなければ、何も起きないのが大統領の現実でした。

現在の大統領研究では大統領には説得する権限さえもないと考えられています。 実際にそうだと思われます。大統領による説得だけで考えを変える議員も世論もないのです。

では大統領には何ができるのでしょうか。まず議題の設定ができます。無数の議題や論点の中からピックアップして議論を促すことができるのです。

アーギュメンターとしての大統領の役割が重要になってきました。論点を抽出するにあたり、大統領自身が世論と議会が同じ方針を取ってくれるような政策を抽出することが大切です。=facilitatorとしての大統領の役割が強くなっています。

大統領が説得できると思わないことが大切です。議会は基本的に動かないので、議会と同調しながら進めることが法案作成には必要です。

議会にとっては大統領が大きなロビイストだと言えます。しかし、他のロビイストと大統領が違うのは大統領が「拒否権」を持っていることです。大統領は拒否権行使をチラつかせることで、議会との交渉を断続的に行い、法案の立ち位置を変更させることができるのです。

ただ、拒否権が行使されるのは大統領が劣勢のときで使わなくていいならそっちの方がいいに決まってます。

世論にアピールすることで政策の立ち位置を変えることができる。しかし、断じて世論を「説得する」できるわけではありません。あくまで世論の中における政策の優先順位を変えようとするだけです。

既存の法令を再解釈することによる大統領令や署名時声明によって行政機関に対して命令を出すこともできます。

大統領は何を目指す?

大統領の目標

政治家として大統領は「上がり」のポストであり、大統領の任期が終了すると政界を引退するのが基本となっています。

そのため1期目の任期後半には再選を目指し、二期目の後半にはレガシー作りを行うようになります。

大統領は止められない?

大統領の利点として自らの決定を実行に移す力を持っている点が挙げられます。そのため決意持つ大統領は現行憲法では止められない可能性があります。

大統領は最大でも2期8年しかできない上に+大統領任期終了は政治家の引退を意味します。そのため大統領令は政治家として何かをなしたい人がなるべきポストです。

2期目の大統領は次の選挙がありません。 そこで考えることは自分の達成した政策目標が持続的になることです。

自分の政策を引き続き行ってくれる自分の所属政党が大統領を輩出し続けることが望ましいと考えるようになります。

2期目になると歴史に名を残したいと考え始めます。そのため2期目に外交を頑張り始める大統領は多くいます。

大統領は期待を集めて当選しますが、実際の権限は相当抑えられています。大統領は期待を裏切る存在であり続ける運命なのです。

今日の大統領は党派ごとの支持者に差があり続けています。大統領は行政命令を行うことで政策を前に進めることが多くなっています。

権力は弱いが実際に権力を行使しようと思えば、ストップできる装置がないのではないかと考えられています。