アメリカ大統領は世界最強の権力者とかウソです

アメリカ大統領は世界最強の権力者とかウソです

この記事ではアメリカの大統領制度について詳しく解説しています。

アメリカの大統領はアメリカという超大国のリーダーであることから世界最強の権力者と目されます。しかし、実はアメリカの大統領は世界最強の権力者とは言えない部分ばっかり。一体どういうことなのか?一緒に勉強していきましょう。

大統領の権力資源

憲法上の権限と政党との関係

アメリカにおける一番の権力者は間違いなく議会。この議会との関係で大統領は権限を大きく制限されています。他の国の執行者と比べてもアメリカの大統領は権力的には弱いと考えられています。

まずアメリカの大統領には具体的な権限が与えられていません。憲法でアメリカの大統領には「執政権」が付与されていますが、これは曖昧で抽象的な権利。どこからどこまでが執政権なのかがよくわからず、総合的に大きな権限が与えられているとは考えられていません。

アメリカの大統領を世界最高の権力者と言うには権力基盤が脆弱すぎです。

大統領の政治的位置付け

19世紀までの大統領は議会に対する「事務主任」との立場で、それほどの権限は与えられていませんでした。

アメリカ建国当初は独裁者が現れることを恐れ、大統領の権限を制限しました。しかし具体的にはどのような権限にすればいいのか決めきれず、現在の合衆国憲法2条1項の曖昧な文章が出来上がりました。

19世紀までの大統領は行政権の長としての役割が大きく、議会が決定した法案をそのまま粛々と執行するための存在でした。知名度が低いのも納得です。

一方、外交は大統領の専管事項。軍の最高司令官でもあります。外交では大きな権限を持っています。そのため、アメリカ大統領は外交と内政では相当に位置付けが異なるのです。そのため、二人の大統領がいるのではないか=「二つの大統領制」が提唱されました。

日本人のアメリカ大統領へのイメージは強い権限を持つ指導者。しかし、その実情は日本人がアメリカ大統領が強い権限を持つ分野での行動=外交を日々観察しているから。外交におけるアメリカ大統領ばかり見ているとその実態を見誤る可能性があります。

現代型大統領の登場とその理由

20世紀に入って、大統領の役割が変わります。変化のきっかけとなったのが世界恐慌での景気低迷とフランクリン=ルーズヴェルトによる政策です。憲法上の権限は変わらないものの、大統領が行うことが変わってきました。

当時、アメリカは大国化し、行政のやることが急増します。そのため大統領の管轄領域が拡大しました。大統領は行政機関の人事権を持っているからです。また選挙における政党への依存度が低下したことで、大統領選挙が他の選挙にも影響を与えるようになり、大統領個人の権力が強まってきました。

大統領と政策形成

大統領の政策過程への影響力

「説得する力」もなく「世話役」と言われるほど政策形成過程への大統領の権力はとても小さいです。その一方で大統領は最強の議題設定役としての地位にあります。

例えば、オバマ大統領は「核のない世界」を作ろうと核兵器廃絶を訴えました。トランプ大統領は「メキシコに壁」を作ろうと訴えています。

このように大統領は無数の議題や論点の中からピックアップして議論を促すことができます。論点を抽出する際、大統領は世論と議会が自分と同じ方針を取ってくれる政策を抽出しなければなりません。そうしないと政策を実現することはできないからです。

政策的影響力行使の手法

アメリカの大統領は政策決定への影響力を強めようと様々なことをします。

  • 拒否権を乗り越えようとする議会との攻防
  • 世論へのアピールで人々の政策優先順位を変更させる
  • 行政命令や署名時命令

などです。

とにかく大統領は政策形成のための権限を持っていません。そのため大統領は「説得する力」しか持っていないと言われてきました。

しかし、現在の大統領研究では大統領には説得する権限さえもないと考えられています。大統領による説得だけで考えを変える議員も世論もないからです。

大統領は何を目指す?

大統領の目標

政治家として大統領は「上がり」のポスト。大統領の任期が終了すると政界を引退するのが基本となっています。

そのため1期目の任期後半には再選を目指し、2期目の後半にはレガシー作りを行うようになります。

2期目になると多くの大統領は歴史に名を残したいと考え始めます。そのため、2期目に外交を頑張り始める大統領が多いです。

2期目の大統領は次の選挙がありません。 そこで自分の達成した政策目標が持続されることを狙うようになります。

そのため自分の政策を引き継いでくれる自分の所属政党が大統領を輩出し続けることが望ましいと考えます。

まとめ

アメリカ大統領は期待を集めて当選しますが、実際の権限は相当抑えられています。大統領は期待を裏切る存在であり続ける運命です。

とにかくアメリカでは議会の力が強い。そのため大統領ができることは特に内政では限られています。内政で議会に押されまくるアメリカ大統領を理解することも大切です。