なぜ北朝鮮はコロナウイルス感染者をゼロと言い続けるのか?

なぜ北朝鮮はコロナウイルス感染者をゼロと言い続けるのか?

自己紹介

は大学で北朝鮮政治について研究する大学3年生です。ブログを研究場所として用いており、これまで北朝鮮関連の記事は80本を超えています。

本当かどうか疑っているそこのあなたはここから確認してください。

今回のテーマはタイトルの通り「なぜ北朝鮮はコロナウイルス感染者をゼロと言い続けるのか?」です。

この記事は少し饒舌になるかもしれません。品質を担保するためですのでご了承ください。

問題の所在:北朝鮮とコロナ

新型コロナウイルスが世界を席巻しています。中国・武漢に始まる流行は中国国内のみならずアジア、ヨーロッパ、アメリカへと伝播。全世界での感染者数は10万人以上となり死者は1万人を超えました。(2020年3月21日現在)

世界保健機関(WHO)も「パンデミック」を宣言し、流行収束への見通しは立っていません。

しかし、この世界はコロナウイルス感染者数をゼロと言い続けている国家があります。

そう。ご存知の朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)です。

北朝鮮は中国での流行が始まった2020年1月以降、新型コロナウイルス「感染者数ゼロ」のスタンスを崩していません。

その一方で新型コロナウイルス蔓延への万全の対策を取っていると公式報道で再三明言しています。

しかし、北朝鮮は中国での流行拡大後に中朝国境を封鎖したため感染者が中朝国境を超えた可能性を排除することはできません。

それを示すように複数の情報機関が北朝鮮における新型コロナウイルス流行を指摘しています。

この記事では実際に北朝鮮において新型コロナウイルスが流行しているのかどうかを検証するわけではありません。

実際に北朝鮮に行って確かめることができない以上、流行の有無は判断できないからです。

それよりも北朝鮮当局による新型コロナウイルスの感染者数ゼロ報道は不自然ではないかと頭をもたげて来ます。

そこでこの記事ではタイトルにあるように北朝鮮がなぜ不可解とも思える感染者数ゼロのような主張をし続けるのかを出来るだけ解明します。

考えられる理由

①:体制宣伝をするため

まず考えられるのは体制宣伝を行うためであるとの理由です。

今回の新型コロナウイルスが世界的に拡大した背景には資本主義社会において人が世界中を自由に往来していることがあります。

その一方で北朝鮮はそのグローバル社会からは取り残された閉鎖国家です。世界から取り残されたために北朝鮮は最貧国としての地位を占めるに至り、軍事力に頼った奇特な独裁体制を維持しています。

北朝鮮独裁体制が新型コロナウイルス流行を世界に対して一矢報いる機会として捉えた可能性があります。

なぜなら人の自由往来が禁止されている北朝鮮で感染者数がゼロと主張すれば、自らの体制が自由社会よりも優れているとの論理が組み立てられるからです。

北朝鮮はコロナウイルスを自らの目標達成=体制維持のために利用することは間違いありません。

②:検査ができていない

そもそも論として北朝鮮は新型コロナウイルスを検査する技術を持っていないから感染者数はゼロにならざるを得ないとの指摘もできます。

この理由の弱いところは実際に技術がないのかを指摘できない点です。しかし、中国や韓国は中朝国境の町・丹東に支援のための検査キッドを搬入した(3月19日)との報道があり、北朝鮮は検査技術を持っていない可能性は排除できません。

脅威ではないコロナウイルス

まとめ

私は北朝鮮当局にとって新型コロナウイルス感染症の感染者数が本当は何人なのかはどうでもよいだと考えています。

例え北朝鮮国内で感染症が蔓延し、死者が多数発生する状況になっても金正恩指導部にとって、それが体制維持に致命的になり得るのかに関しては踏み止まって考える必要があると考えています。

金正恩政権が自らを独裁者として戴く現体制の維持に執心していることは周知の通りです。

体制維持という究極目的を達成し続けるためには金正恩政権は行動しています。これが国民の財産保護や厚生上昇を主目的とする民主主義国家とは大きく異なる点です。

となれば、国民の生命を奪うがために各国が躍起となって封じ込めに邁進するコロナウイルスへの対応も北朝鮮においては西側諸国のそれと大きく異なって当然。

ここで1つの参考になるのが1990年代の北朝鮮を襲った大飢饉です。この大飢饉は「苦難の行軍」と呼ばれ、多数の死者が発生しました。

正確な数字はわかりませんが数百万人単位での死者が発生したと考えられています。当時の国際社会は本気で北朝鮮が崩壊すると考えていました。

しかし、北朝鮮政治体制は崩壊しませんでした。なぜか。それは独裁体制の悲しい原理としていくら市民が亡くなっても体制の維持には無関係と考えられていることです。

こちらのツイートもどうぞ。

さて独裁者にとって重要なのは自らの地位を守ってくれる少数の幹部に対して潤沢な資金を提供することです。

市民の死は独裁体制の変化には意味がありません。とすれば新型コロナウイルスが流行しても一部の高級幹部や軍における流行が起きない限り、北朝鮮体制にはさしたる影響を及ぼさないでしょう。

当然、北朝鮮のコロナウイルス対策も自らの体制を維持するために必要な人たちに向けて行われるでしょう。そこで名もなき市民は切り捨てられることになります。

これを示すような情報があるので次はそれを紹介したい。

指導部の行動を読み解く

中国や韓国で感染者数が急増していた3月上旬から金正恩国務委員長は軍関連の現地指導を活発化させています。

3月2日と3月9日、3月21日に相次いで短距離ミサイルを発射しましたが、どちらの訓練にも金正恩国務委員長が現地指導したとの報道がされました。

そこで興味深いのは金正恩が平壌を離れて日本海沿岸の町・東海に居住地を移しているとの情報です。新型コロナウイルスへの感染を恐れてと考えられています。

本当に重要な人物を守り、一般市民を切り捨てる独裁政権の性を伺うことができます。市民が亡くなっても北朝鮮独裁体制維持には関係ないことを強調しておきたいと思います。

まとめ:北朝鮮はコロナをどのように考えているか

北朝鮮にとってのコロナウイルスは自らの体制を直接的に崩壊させるものとは現時点では認識していないでしょう。理由はこれまで述べてきた通りです。

しかし、いくら関係ないと言っても一定の民心を取り付けておくことは大切。3月18日に金正恩は平壌総合病院の着工を現地で宣布し、自ら着工のくわ入れを行いました。

大病院を平壌に作るのは平壌に居住する特権階層向けのキャンペーンです。少なくとも平壌市民だけにはコビを売っておこう。そんな意識がみて取れます。

しかもこの大病院建設のロジックもコロナウイルスとは直接関係のないところから引っ張ってきています。

国内における感染者数ゼロを唱え体制宣伝をしながら、体制維持に必要な人間へのキャンペーンを展開する。

これは独裁体制として極めてオーソドックスな方法をとっており、新型コロナウイルスが北朝鮮政治体制を脅かすと希望的観測をしている一部の日本人の心は早晩に打ち砕かれるものと確信しています。