北朝鮮・金正恩の観光政策に注目するべき理由

北朝鮮・金正恩の観光政策に注目するべき理由

「感染者数ゼロ」の意味を考える

新型コロナウイルスが世界中で蔓延する中で北朝鮮がにわかに世界からの関心を集めています。北朝鮮が新型コロナウイスル感染者がいまだにゼロであると発表しているからです。実際に北朝鮮国内で新型コロナウイルス感染症が流行しているのかはわかりません。しかし、北朝鮮がなぜ感染者をゼロと発表するのかについては考える価値があると常に申し上げてきました。その理由についてはこちらの記事をご覧ください。この記事では北朝鮮が感染者数をゼロと言い続ける理由を北朝鮮と中国との関係性から論じてみたいと思います。

中国に依存する北朝鮮

北朝鮮は中国との貿易・交易に自国の輸出入を全面的と言っていいほど依存してきました。具体的には輸出入総額の9割を中国が占めています。この背景には国連からの制裁がかけられていることがあげられます。現状では日米韓はもとより欧州各国とも貿易を行うことは許されていません。

制裁にかからない観光業

そこで北朝鮮が目をつけているのが観光政策です。金正恩は観光政策を推進していることはよく知られています。観光業は国連制裁の対象ではないからです。

金正恩政権は国内観光開発を急ピッチで進めています。平壌市内の遊園地整備は元より陽徳温泉文化休養地や馬息嶺スキー場などを相次いで建設し、観光客誘致を進めています。

北朝鮮への観光客のほとんどは中国人です。およそ1400kmに渡って国境を接する北朝鮮と中国は先述のように経済的に強いつながりを持っているばかりか文化的な交流も数多く行われてきました。

北朝鮮にとっての観光業の意味

金正恩政権が国外からの観光客を受け入れる背景には観光業に主に2つの効能があると考えられています。

1つ目が体制宣伝です。

北朝鮮は観光というものを2つの手段として用いています。1つ目が体制宣伝です。観光を通じて「北朝鮮はこんな国ですよ」「こんなによいところがありますよ」と観光客に自国の政治体制や歴史、文化の素晴らしさを伝えようとしています。

2つ目が外貨獲得です。先述のように国連制裁がかかっている北朝鮮は普通の手段(貿易など)で外国と取引をすることができません。しかし観光だけは国連制裁に引っかからないので北朝鮮にとって格好の外貨稼ぎの手段になります。

観光業は体制維持に十分な栄養分か?

金正恩が観光政策に力を入れる背景に国連制裁に引っかからないからとのロジックを持っているとすれば話は厄介なことになります。金正恩には国連制裁を解除しなくてもやっていけるのではないかとの考えが明確になるからです。

観光政策を通じた外貨稼ぎが金正恩政権の体制維持に十分な力を与えるのなら北朝鮮が国連制裁を解除してもらえる行動をとる可能性は小さくなるでしょう。

ここでの「国連制裁を解除してもらえる行動」とはアメリカとの非核化交渉に応じて北朝鮮が核兵器や核実験場を放棄したり、長距離/短距離弾道ミサイル発射実験中止などの行動を指します。

国連制裁に合法的に引っかからない観光業を発展させたい金正恩の姿勢は明確です。金正恩は国連制裁に引っかからない形で体制維持のための力を手っ取り早く獲得したい。そこで十分な外貨を得ることができたら国連制裁を解除するための行動をとるインセンティブは非常に小さくなります。

北朝鮮は新型コロナウイルスの感染者数をゼロと言い続けています。この背景には中国に依存する貿易と観光を一刻も早く再開させたい意図が推察されます。裏を返せば北朝鮮は体制維持の養分を中国から補給していることになります。

北朝鮮にとっては幸いなことに中国での新型コロナウイルス感染症の勢いは徐々に収束へと向かっています。ここで北朝鮮が感染者が国内に蔓延していると発表することは北朝鮮自身のこれまでの努力がなくなることを意味します。

だから蔓延していようとしてなかろうと北朝鮮は新型コロナウイルス感染症の感染者数をゼロと言い続けるでしょう。北朝鮮は安心して中国が自分との交易を再開させたいからこそ国際社会からの疑念を一貫してつっぱねてきました。ここで折れるわけにはいきません。

北朝鮮が観光政策にこだわりを見せれば見せるほど観光業が北朝鮮にとっていかに「オイシイ」産業であるのかがわかるはずです。なぜなら国連制裁を解除するために自らが譲歩する必要がなくなるからです。

北朝鮮の観光政策が北朝鮮経済に占める割合を検討することこそが今後求められる課題になると考えています。

蛇足

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