なぜ北朝鮮最高指導者は「現地指導」をするのか?

なぜ北朝鮮最高指導者は「現地指導」をするのか?

この記事では北朝鮮の最高指導者が現地指導をするのかについて解説していきます。

日本でも金正恩が得意げに軍隊の訓練を視察したり、工場を視察したりする様子がよく報道されます。

それらはすべて最高指導者が実際に現地に赴き、訓練や工場の方針を指示する「現地指導」と呼ばれるものです。

「現地指導」は北朝鮮独特の政治的なイベントです。北朝鮮政治が持つ独特の風習がなぜ行われるのかについて解き明かしていきます。

「現地指導」とは何か?

北朝鮮において最高指導者が実際の現場に足を運び、あれこれと指示や今後の方針を述べることを「現地指導」と言います。

最高指導者が現地指導に訪れた場所は最高指導者が最も力を入れている訪問場所であり、北朝鮮政治を研究する上でも最も重要なイベントの一つと言っていいでしょう。

現地指導の際、随行する幹部たちが必死にメモを取る姿は特徴的です。彼らは一言一句漏らさぬよう必死。なぜか。

それは北朝鮮では最高指導者の言葉(「マルスム」or「教示」)は憲法以上の権威を持つからです。権威ある言葉を聞き逃すことは許されません。

最高指導者の言葉に権威があることを示すように現地指導が行われた場所には現地指導の際の最高指導者の言葉を記した記念碑が立ちます。

なぜ現地指導は行われるか?「大衆」から考える

なぜ北朝鮮の最高指導者は「現地指導」を行うのか?多くの理由はあるかと思いますが、ここでは北朝鮮が持つ「大衆論」から考えます。

端的に言えば、北朝鮮政府は一般大衆を「無能」な存在と規定しています。

北朝鮮を指導する朝鮮労働党は大衆が自発的な社会主義革命を行うことを基本路線としています。しかし、これは社会主義国である北朝鮮の建前です。

実際には革命の主体である一般市民=「大衆」は教え導かねばならない存在され、その教え導く存在として最高指導者が必要なのだとのロジックが作られています。

「現地指導」は「無能」な「大衆」を教え導く手段の一類型と考えられています。

勝手に「無能」な存在とされる一般市民もたまったものではないと思いますが、実際に現地指導を受けると最高指導者の「すごさ」に圧倒されるようです。

なぜなら最高指導者は実際に現地指導する際に十分な準備を持って指導を行います。本当に何から何までを正確に理解し、正確な指示を出すからです。

事前にアンチョコを見て準備しているためで、最高指導者もすごい人を演出するためにはそれなりに必死だと言うことです。

おまけ:現地了解

ここまで「現地指導」について解説してきましたが実は「現地了解」というものもあります。

「現地了解」とは最高指導者による現地指導後、実際に指導内容が実行されているかを党幹部が「確認する」=「了解する」ことです。

金日成時代には行われていましたが金正日時代になり、中止。長らく行われていませんでしたが、金正恩時代になり復活しましたことで再び注目を集めています。

最高指導者が現地指導を行う際は工場でも農場でも最高の準備をします。普段の実態とはかけ離れていても最高指導者に無様な姿は見せられないからです。

最高指導者は取り繕った姿を見て大いに満足したことを表明して帰ります。しかし、普段の姿はどうなっているのかについては「現地了解」のシステムを使って幹部が確認することになっています。

ちなみに僕の先生は「現地了解」について知っている日本人なんてほとんどいないと豪語していたので、この知識に出会えたあなたはラッキーです。おめでとうございやーす。

まとめ

北朝鮮と言えば現地指導。それくらい最高指導者が多くの幹部を引き連れてあれこれ言っている姿は印象的です。

しかし、現地指導の裏には北朝鮮政府が持つ大衆論や最高指導者の存在を正当化するためのロジックが存在しています。

幹部たちがメモを取る背景には北朝鮮独特の論理が存在しているのです。

蛇足:軽い自己紹介

私は大学で北朝鮮政治を専攻する大学4年生です。ブログを研究の場として用いていてこれまで70記事ほどを執筆してきました。

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